「明日」をつくるしごととくらし

テクノロジーを取り入れた教育の普及に取り組む NPO で働いています。

公立学校情報化ランキング

 先日、全国市区町村 公立学校情報化ランキング 2010が公開されました。学校の中にいる者にとって参考になる点が多々ありました。しかし、市区町村単位でランキングとして出すことの妥当性は検証する必要があると思います。
 このランキングは、日経パソコン文部科学省の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」を元に算出したものです。対象になった自治体は小学校が1788、中学校が1822、高等学校が47だそうです。
 さて狛江市は、と見てみますと、843位ということでほぼ真ん中辺りです。インフラ 68.1%、指導力 66.6%、総合 67.3%ということになっています。おとなりの世田谷区はインフラ 59.9%、指導力 66.6%、総合 63.3%ということで1061位にランクされています。しかし、私の実感とは違っています。世田谷区の方が情報化が進んでいて、狛江市はその動向を参考にしていることがいろいろあるのです。なぜ食い違いを感じたのか、その理由を考えてみました。
 この数値の算出方法は、

「インフラ整備」は、4項目の達成度の平均値を算出した。「教員指導力」は、各項目に関する質問(合計18問)に対して「わりにできる」「ややできる」と回答した教員の割合の平均値を算出した。各市区町村の教員指導力は、公開されている都道府県単位のデータから算出した。インフラ整備、教員指導力の平均値を「総合」スコアとし、この値から順位を出した。

となっています。つまり、同一都道府県内ならば指導力は同一と見なされるので、インフラの整備率がそのまま順位につながるということです。本当に指導力は同一なのでしょうか。私は世田谷区の先生方を何人も知っています。世田谷区には情報化のエキスパートが何人もいて、優れた実践をたくさん行っています。
 ここで学校数の違いを見てみましょう。狛江市の小学校は6校であるのに対して、世田谷区は64校と10倍以上の規模です。この違いはインフラ整備を考える上で無視できないものであるはずです。そしてインフラ整備のうち、一番大きく影響を与えているものが普通教室のLAN整備率で、狛江市が67.8%であるのに対して、世田谷区は18.7%です。この「普通教室のLAN整備率」というものは、ネットワークケーブルがその教室に来ていればカウントされます。実際に教室でインターネットを利用した授業を行うために必要なパソコンやハブなどの機器がなくてもです。つまり、「LANを利用している教室」ではなく、「LANを利用できる教室」なのです。LAN整備率が高いからといって、日常的にどの教室でもインターネットを利用しているとは限りません。
 客観的に考えるために数値を元にすることは大切です。しかし、数値になったとたんにその数値が出てきた背景は捨象され、時として一人歩きを始めてしまうことがあるので注意が必要です。市区町村単位で総合順位を出すことに意味があるのか疑問です。また、ランキングにすることで一般的な関心を呼ぶことと思いますが、学校の実態を直接知らない方々にどこまで分析的に見てもらえるのか、順位の印象だけで学校の情報化を語られることにならないか不安に感じています。