一ヶ月45億ページビュー、日本最大級のニュースサイトであるヤフー・トピックスの編集長がその内幕を書いた本。情報教育という観点でも、参考になることがたくさんありました。日々トピックスを編集する作業は、「必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達」するにあたって、「情報手段の特性の理解」の上に立ち、「望ましい情報社会の創造に参画しよう」としているものです。そして、私たちは、子どもたちにもこういう情報活用能力の基礎が身に付けられるよう努めているのです。
では、目に留まった部分を紹介していきます。
「1章 トピックスの作り方」より
- ほぼ無限にあるホームページやブログのなかから、何を集めてきて、どのような順番で、どこにリンクしていくかという作業は、どのような文脈を作るのかということと同じです。(p.59)
- 自ら書かずにニュースを扱う思い(p.62)
- 「世の中を良くしようと思った場合、そのメッセージは世の中に伝わらないといけませんよね?知られることによって世の中が変わっていくのですから」(p.64)
- 「情報が整理されて集まることで力が生まれるんですよ」。(p.68)
オリジナルの記事を書くことは大切だけれど、散在している点の情報をつなぎ合わせて線や面に広げていく仕事もその人の生み出した成果なのです。膨大な情報の海を泳ぎ抜いていく人々のために必要不可欠な作業と言えます。情報活用の実践力に関わる部分です。
「2章 13文字の作り方」より
- 13文字見出しに「一目でわかる効果」があることは経験的に気づいていましたが、あとになって京都大学大学院の研究により「一度に知覚される範囲は9〜13文字」であるという知見が報告されていたのを知り、(p.73)
- それは、13文字見出しを付ける過程において、余計な情報が削ぎ落とされ、何が重要なのかが非常に明確になるということです。(p.74)
- 本当に驚きに値する記事やコンテンツであれば、読者はビックリマークがなくても驚いてくれるはずだと思うのです。(p.84)
「人間の知覚,記憶,思考についての特性に関する基礎的な理論と方法」など、情報の科学的な理解に関わる部分です。子どもたちがプレゼンを作ると、派手なアニメーションや刺激的な言い回しを使いたがることがよくあります。しかし、本当に伝えるべき内容を大切にするならば、そうはならないということです。適切な制約があるということは質の高い表現にとって大切なことなのかもしれません。
3章以降も情報社会に参画する態度に関わる部分がちりばめられていたり、伝統的な報道機関の存在意義やソーシャルメディアとの関わり*1について述べられていたり、いろいろ示唆を受けた部分がありました。中学生にニュースの真偽を見分ける演習をさせた件(pp.173-175)は、今後授業でやってみたいと思いました。
- 作者: 奥村倫弘
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2010/04/16
- メディア: 新書
- 購入: 8人 クリック: 240回
- この商品を含むブログ (51件) を見る