「明日」をつくる生活。

テクノロジーを取り入れた教育の普及に取り組む NPO で働いています。

日野市立平山小学校公開研究会

 研究会に参加しました。日野市立平山小学校はICT活用の先進的な取り組みを進めている学校です。総務省総務省|北海道総合通信局|地域雇用創造ICT絆プロジェクト(情報通信技術地域人材育成・活用事業交付金)採択校であり,パナソニック教育財団「未来の教室」プロジェクトの共同研究も行っています。
 1〜6年まで一クラスずつの授業公開がありました。

学年 教科 単元 学習形態 使用機器・ソフト
1年生 算数 くりあがりのあるたしざん 個別学習 インタラクティブスタディ
2年生 算数 ひき算のひっ算 個別学習・一斉学習 デジタルペン
3年生 算数 はかるものしらべ 協働学習 スタディノート
4年生 算数 平行四辺形をつくろう 個別学習・一斉学習 学習者用デジタル教科書*1
5年生 家庭科 住みやすい環境 協働学習・一斉学習 スタディノート
6年生 国語 メディア・リテラシー入門 協働学習・一斉学習 ソーシャルリーディング*2
わかくさ 生活単元 宿泊学習の新聞をつくろう 協働学習 スタディノート

 それぞれ参考になる実践でしたが,特に印象に残ったのが6年生・4年生・2年生の授業でした。
 6年生は読み取ったことを相互に交流し評価し合うための「ソーシャルリーディング」というツールが効果的に活用されていました。まず教材文を子どもたちののタブレット端末に送ります。子どもたちは読み取りの視点に沿って必要な記述にラインを引きます。すると,どこにラインを引いたかという情報が電子黒板に送られ,同じ教材文が表示された画面上にもラインが表示されます。おもしろいのは,同じところにラインを引いた人が多ければ多いほど電子黒板上のラインが太く表示されるというところです。指導者にとってはその太さからどこをどのように授業の中で取り上げていくかオンタイムで判断する材料になりますし,学習者にとっては自分と他の人の共通点・相違点が即時フィードバックされるということです。誰がそこにラインを引いたのかという情報を相互に見ることもできます。そして「ソーシャル」たるゆえんと言えるのが,ラインを引いたことに対してスターをつけられる機能です。Facebookのいいね!ボタンにあたるものです。さらにラインを引いたところに自分の考えたことや感じたことをコメントとして記入することもできます。文章では伝えにくいので動画があるといいのですが…
 この授業にまつわるエピソードが協議会で授業者から紹介されました。手を挙げて発言するのが苦手な子の書き込みでいい内容のものがあり,他の子が何人かそのよさに気づいて授業後に集まってきて口々に「○○君の意見がいいんだよ!すごいこと書いてるよ!」と言いに来たというのです。挙手発言以外にも光る思考があり,それをすくい取って授業に組み込むことでさらに授業を豊かにできる可能性を感じました。
 4年生は「初めての学習者用デジタル教科書」という位置づけでの取り組みでした。上記のリンク先を見ていただくと理解できると思いますので,説明は割愛します。学習者用デジタル教科書はフューチャースクールの環境で動かすことを想定して開発されているので,平山小の環境でうまく動くかどうかはわからなかったそうです。しかし,実際に動かしてみたらうまく動いたということで今後の普及につながるかもしれません。
 2年生のデジタルペンは専用紙の上に子どもが書き込んだことが,電子黒板上でワンステップずつ再生できるものです。ひき算の筆算をするときに,わからない子にとってはどのタイミングでどこに数字などを書き込んでいくのかが難しく感じられます。紙の上でやったことが電子黒板にそのまま時間順で再生されれば,わかった子が手順を説明するときの(言語活動を促す)大きな支援になりますし,わからない子にとっても理解の助けになります。
 行政や企業のさまざまな支援で平山小の環境は構築されているということですが,特別なサポートがなくても同様の学習環境が整備され,先生方が抵抗なく使える日が一日も早く来てほしいと思いました。

*1:平山小の活用事例へのリンクです

*2:大学で研究中のものだそうです