「明日」をつくるしごととくらし

テクノロジーを取り入れた教育の普及に取り組む NPO で働いています。

「探究的な学習」とは

 探究的な学習がこれから重要になるとこれまで研修の中でもお話ししてきました。しかし、探究的な学習とは何かということについて、自分自身、きちんと確認していなかったように思います。SNS のある投稿をきっかけにまとめてみようと思いました。

 自分の関心領域は公教育にあるので、学習指導要領関連の記述を当たってみます。【総合的な学習の時間編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説には次のような記述があります。

探究的な学習とは,物事の本質を探って見極めようとする一連の知的営み

 さらにその前段には、「探究的な学習の過程」についての記述があります。

  1. 日常生活や社会に目を向けた時に湧き上がってくる疑問や関心に基づいて,自ら課題を見付け,
  2. そこにある具体的な問題について情報を収集し,
  3. その情報を整理・分析したり,知識や技能に結び付けたり,考えを出し合ったりしながら問題の解決に取り組み,
  4. 明らかになった考えや意見などをまとめ・表現し,そこからまた新たな課題を見付け,更なる問題の解決を始めるといった学習活動を発展的に繰り返していく。

 そして、その記述に対応して次の図が示されています。 f:id:takeya_masaaki:20210605185731p:plain

 ここからは私の解釈になります。まず、子ども自身が見付けた課題からスタートします。子どもの要求を無視した押し付けの課題であってはなりません。もちろんそれは、学習者が周りの人や環境との関わりから立ち上がってくるものであり、最初はぼんやりしていることもあるでしょう。だからこそ、そこに教師の役割があります。子どもの課題意識を引き出し、明確にしていく「仕掛け」を講じていくのです。教材や場の設定、体験の機会、意図的な情報の提示といったことが要素として考えられます。
 続く情報の収集ですが、よくある「調べ学習」に留まってはならないと思います。観察や実験、フィールドワークなど、子どもが意図した活動から幅広く得られるものと考えるべきでしょう。「見てみたい、やってみたい」を大事にするべきだと思います。それこそが、主体的な情報収集につながるのです。
 そして、整理・分析の段階が最も難しく、最も重要だと言えるのではないかと思います。分類する・比較する・関連付けるといった高次の知的活動を伴いますし、子どもたちにとってはそのための基準や視点が十分には身に付いていないことが往々にしてあるからです。ということは、教科の学習活動の中で、汎用的に使える道具を身に付けさせる活動を仕組んでいく必要があるでしょう。例えば、シンキングツールを取り入れて使い慣れていくことが有効ではないかと思います。
 最後の段階、まとめ・表現も多様な方法を身に付け、その中から自分の意図に合ったものを選び取れるようにすることが必要です。エッセイ・レポート・新聞・ポスター・小冊子・プレゼン・演劇・映画などさまざまな形式が考えられます。コンピュータのプログラムもそのうちの有力な一つでしょう。多くの要素が総合的に関連した形で成果を提示することができれば、それはきっと現実の社会を変えていく力になるはずです。難しいのはどう評価するかということですが、そこは今まで研究が進んでいないところなので、試行を重ねて形を作っていくしかないでしょう。
 さて、ここまで日本の教育行政における「探究」について、みてきました。今後、もう少し視野を広げて「探究」について掘り下げていきたいと思います。