「明日」をつくるしごととくらし

テクノロジーを取り入れた教育の普及に取り組む NPO で働いています。

国連の SDGs に関する文書の前文を読む

 SDGs という言葉はだいぶ浸透してきたようです。学校教育の中でも取り上げられることが多くなってきていると思います。ただ、「よく分からないけどみんな言ってるから大事だよね」的な広がり方をしてはいないかと、気になっています。
 そもそも SDGs とは?と調べていて、国連で採択された文書を見付けました。正確には "Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development " (外務省の仮訳では「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」)というものです。以下のリンクに英語本文とその仮訳のPDFがあります。

www.mofa.go.jp

全部で37ページもありますので、ここではその趣旨や理念が書かれている前文(最初の1〜2ページ)を見ていくことにしましょう。原文とDeepLの訳文を載せていきます。

This Agenda is a plan of action for people, planet and prosperity. It also seeks to strengthen universal peace in larger freedom. We recognize that eradicating poverty in all its forms and dimensions, including extreme poverty, is the greatest global challenge and an indispensable requirement for sustainable development.
このアジェンダは、人、地球、繁栄のための行動計画である。また、より大きな自由の中で普遍的な平和を強化しようとするものである。我々は、極度の貧困を含むあらゆる形態の貧困を根絶することが、世界最大の課題であり、持続可能な開発にとって欠くことのできない要件であることを認識する。

 SDGs というと、環境問題を最初に思い浮かべる人も少なくないと思いますが、冒頭に世界最大の課題は貧困であるとうたわれています。この辺りからして、私の周囲での受け止め方とのズレを感じます。

All countries and all stakeholders, acting in collaborative partnership, will implement this plan. We are resolved to free the human race from the tyranny of poverty and want and to heal and secure our planet. We are determined to take the bold and transformative steps which are urgently needed to shift the world on to a sustainable and resilient path. As we embark on this collective journey, we pledge that no one will be left behind.
すべての国とすべての関係者が、協力的なパートナーシップのもとに行動し、この計画を実行する。我々は、人類を貧困と欠乏の圧政から解放し、我々の惑星を癒し、安全にすることを決意している。私たちは、世界を持続可能で強靭な道へと移行させるために、緊急に必要とされる大胆で変革的なステップを踏むことを決意している。この集団的な旅に乗り出すにあたり、私たちは誰も取り残されないことを誓う。

 この文書が採択されたのは2015年でそれから7年が経とうとしています。「緊急に」という認識に比べて実際の改善の歩みは…難しいですね。待ったなしの課題ばかりである一方、実感がなかなか伴わない部分もあります。そんなことを言っていないで想像力と知恵を働かせなければならないのですが。

The 17 Sustainable Development Goals and 169 targets which we are announcing today demonstrate the scale and ambition of this new universal Agenda. They seek to build on the Millennium Development Goals and complete what they did not achieve. They seek to realize the human rights of all and to achieve gender equality and the empowerment of all women and girls. They are integrated and indivisible and balance the three dimensions of sustainable development: the economic, social and environmental.
本日発表する17の持続可能な開発目標と169のターゲットは、この新しいユニバーサル・アジェンダの規模と野心を示している。これらは、ミレニアム開発目標の上に構築され、達成できなかったものを完成させることを目指している。これらは、すべての人の人権を実現し、ジェンダーの平等とすべての女性と女児のエンパワーメントを達成することを目指している。これらは、統合的かつ不可分であり、持続可能な開発の3つの次元(経済、社会、環境)のバランスをとるものである。

 17の目標は全て互いに関連し合っており、どうやってバランスをとっていくかを考えるものなのだということは、あまり認識されていないように思います。個別の取り組みが目標の何番にあたるのかということは見ても、それが他の課題とどのように関連あるいは対立するのかというところまで考えている人はどれだけいるのでしょうか。

 このあと、People(人間)Planet(地球)Prosperity(繁栄)Peace(平和)Partnership(パートナーシップ)の5つの視点で決意が述べられますが、ここでは省略します。最後の段落にはこのように書かれています。

The interlinkages and integrated nature of the Sustainable Development Goals are of crucial importance in ensuring that the purpose of the new Agenda is realized. If we realize our ambitions across the full extent of the Agenda, the lives of all will be profoundly improved and our world will be transformed for the better.
持続可能な開発目標が持つ相互連関性と統合性は、新たなアジェンダの目的を確実に実現する上で極めて重要である。もし、私たちがアジェンダの全範囲にわたって私たちの野心を実現するならば、すべての人の生活は大きく改善され、私たちの世界はより良い方向に変化することだろう。

 ここでも目標が相互に関連し統合して扱われるべきものであることに言及されています。学校教育などで扱う際には、わかりやすくするためにシンプルなアプローチが必要な局面はあるとは思いますが、個別のテーマとして扱ってばかりだと、そもそもの理念から離れてしまうおそれがあります。SDGs について指導するのであれば、そのことを忘れてはいけないのではないでしょうか。