「明日」をつくるしごととくらし

テクノロジーを取り入れた教育の普及に取り組む NPO で働いています。

全国学力調査の問題に見るこれからの教育への流れ

国学力学習状況調査が実施されました。

令和6年度全国学力・学習状況調査の調査問題・正答例・解説資料について:国立教育政策研究所

問題を見て、次のような印象を受けました。

  • コンピュータやネットワークを当たり前に学習に使う前提
  • 伝統的な学力から PISA で問われるような学力へのシフト(非連続テキスト、データ分析)
  • 現実場面の問題解決に生かせる形の学力になっているかが問われる

情報活用能力との関連という視点で次の点に注目しました。

【小学校国語】

  • 大問1、オンライン交流についてのメールの内容を読み取るという問題
    • それを受けて発信する内容を図表の形で非連続テキストのメモとしてまとめる
  • 大問2、学校のよさを文章に書くため、ウェビングの手法でメモをまとめる
    • 書いた文章は横書きになっている

【小学校算数】

  • 大問5、桜の開花日について円グラフ・表・折れ線グラフを読み取る
    • 読み取ったことを言語化するなどデータの分析に関連する出題
    • 桜の開花日を気温の数値から予想するのはシミュレーションの入口か

【中学校国語】

  • 大問1、フィルターバブルに関する問題 図表を読み解く
  • 大問3、物語を書く題材が紙の辞書とオンライン辞書の比較

【中学校数学】

  • 大問7、障害物を検知して止まる車型ロボットのプログラムについての問題
    • 動作を改善するために実験し最頻値を求める
    • データの分布を箱ひげ図に表し検討
  • 大問9、図形の変形についてコンピュータでのシミュレーション画面を見て仮説を立てる設定

「誰の仕事でもない仕事」はなくせないか

何の気なしに過去記事を見ていたら、15年前に書いたこの記事が目に留まりました。

誰の仕事でもない仕事 - 「明日」をつくるしごととくらし

要約すると、

学校でも「誰の担当なのかわからない」仕事が発生しがちであり、流動的に分担して対処し合い、感謝を伝え合えるのがよい職場だ。ただし、対処すればいいのではなく、そういう状況に陥ってしまうのを修正することもまた必要。

といった内容です。

今になってこれを読むと、(対処できてしまうと問題が見えなくなり、その後の修正につながらないのではないか)とも思います。「そもそもその仕事はどうしても必要なものなのか、まず見きわめよう」という前提が必要だと今は思います。子どもたちの成長のために「やった方がよい(と教師が思う)こと」は山ほどあり、それがどんどん積み上がって苦しくなっているところがあるのではないでしょうか。

組織や制度の問題によって業務量が膨大になっている部分が大きく、学校が立ち行かなくなっていることは明らかです。整理して削減する取り組みはどんどん進めるべきだと思います。ただ、それだけではしばらく経てば元に戻ってしまう可能性があります。教師自身や保護者の意識改革も必要でしょう。それは何も今までの信念を捨て去ることではなく、子どもたちが未来の可能性をひらく力を付けるために本当に必要なことは何なのか、そこを見きわめようとする営みなのだと思います。

フローとストック:情報活用の視点

私たちは毎日、たくさんの情報に触れています。この情報の山をどう整理し、どう使うかは、多くの人が頭を悩ませる問題です。そこで、情報を「フロー」と「ストック」という見方で捉えてみましょう。この考え方は、仕事の効率やコミュニケーションをスムーズにするのに役立ちます。「フロー」と「ストック」という言葉はもともと経済学の用語ですが、経済以外の様々な分野でも使える有効な視点です。

「フロー」情報とは、流れていく一時的な情報を指します。たとえば、メールや Slack のようなチャット、SNS でのやり取りがこれに当たります。この種の情報はすぐに更新され、時間が経つにつれてその価値は減少していきます。一方、「ストック」情報は、時間が経ってもその価値を保ち続ける情報です。これは、参照されたり、再利用されたりするもので、クラウド上のドキュメントや Notion のようなナレッジ管理ツールで整理・保管されます。

フロー情報はその時々において重要度が高く、スピーディに共有する必要があります。時間が経つと状況が変わってその価値は失われていくので、重要な部分はストック情報として保存しておくとよいでしょう。たとえば、チャットでの会話から重要な点を抜き出してドキュメントにコピー&ペーストしておけば、長期的に利用できる価値ある情報とすることができます。ストック情報は保存する場所を限定しておいたり検索しやすい工夫をしたりしておくとフロー情報として活用できる場面が多くなります。

情報があふれる現代において、フローとストックを意識しないまま情報を扱うと、大切な情報を見失ったり、情報の過剰な蓄積が生じたりすることがあります。例えば、重要なプロジェクトのメールが日々の大量のメッセージに埋もれてしまうことがあります。また、チャットで共有された重要な情報が時間とともに流れてしまい、後で必要な情報を探すのが困難になることもあります。

情報をフローとストックという視点で管理することにより、必要な情報を適切なタイミングで活用することが可能になります。例えば、プロジェクトの詳細な議事録は文書化してメンバー全員がいつでもアクセスできるようにストック情報として保管し、プロジェクトの進捗はチャットでリアルタイムに共有するといったようなことです。このようにすることで、仕事の効率を上げ、重要な情報を見落としたり時機を逸したりすることを防げます。情報の特性を理解し、それぞれの状況に合わせてフローとストックをうまく切り替えることは、ますますデジタル化が進んでいく現代において非常に重要なスキルです。

初等中等教育の中で育成する情報活用能力の一部として、意図的に指導する場面を設定することも必要だと言えるでしょう。

『生成AIで世界はこう変わる』

 このところ驚くほど急速に発達している生成AIが私たちの生活にどのような影響を及ぼすかについて書かれている本です。著者は東京大学の松尾豊教授の研究室に所属する新進気鋭の若手研究者とのことです。理論的な基盤に支えられ、生成AIという技術のもつ可能性とリスクを深く理解した上で、今後の影響を分析しています。

章立ては次のようになっています。
第1章「生成AI革命」という歴史の転換点―生成AIは人類の脅威か?救世主か?
第2章 生成AIの背後にある技術―塗り替わるテクノロジーの現在地とは
第3章 AIによって消える仕事・残る仕事―生成AIを労働の味方にするには?
第4章 AIが問い直す「創作」の価値―生成AIは創作ツールか?創作者か?
第5章 生成AIとともに歩む人類の未来―「人類の言語の獲得」以来の革命になるか?

 私は第3・4章を特に興味深く読みました。

 第3章の中で、技術についての「労働補完型」「労働置換型」という視点が示されています。「労働補完型」というのは、人間の労働を補助し、その労働自体を楽にしたり、生産性を上げたり、新しい仕事を生み出すきっかけになるような技術のことをいいます。一方、「労働置換型」というのは、スキルを持った労働者が不必要になり、そのような労働者が就ける代わりの仕事も生み出さないような技術のことをいいます。産業革命初期に登場した紡績機、力織機などは労働置換技術であったとされています。

 今後、教育の分野にも生成AIが大きな影響を及ぼすことが予想されますが、「労働置換型」ではなく「労働補完型」、つまり教師の仕事を置き換えるのではなく、強力にサポートしてくれる技術としていけるかどうかが問われることと思います。それは実際に生成AIを積極的に使う経験を積み重ねることで見えてくるのでしょう。

第4章では、AI と創造性との関係を考える際に、次のような創造性の3つの分類が示されています。

①組み合わせ的創造性(Combinational Creativity)
②探索的創造性(Exploratory Creativity)
③革新的創造性(Transformational Creativity)
①の「組み合わせ的創造性」は、既存のアイディアや知識の組み合わせ(あるいは引き算的な考え)によって、新しいものを生み出す創造性のことです。
②の「探索的創造性」は、既存のアイディアや知識をなんらかのルールや手続きに従って探索することで、新しいものを生み出す創造性です。
③の「革新的創造性」は、既存のアイディアや知識の枠を飛び越えて、新たなルールを定義するような形で完全に新しいものを生み出す創造性を指しています。

そして筆者は、こう述べています。

③の「革新的創造性」に関しては、現在の生成AIに欠けているように見えます。
ただ、実はこの種の創造性は人間の場合でも発揮されることはかなり稀です。

 だとすると、これから重要になってくるのは、いかに革新的創造性を発揮できるようにするかということなのではないでしょうか。そのためには「外れ値」にあたる発想を大事にすることが必要になってくると思われます。そしてそれは、現在の学校教育が最も不得手とするところだと思うのです。

 生成 AI の発展は教育に関わる私たちに、のっぴきならない問いを突きつけているのですが、その認識を共有できる人はほんのわずかしかいないように思います。

『「超」メモ革命』

note ばかり更新して、はてなブログを放置していました。note の方はみんなのコードでの仕事関係にして、こちらは日々の生活で感じたことや考えたことを書いていこうと思います。というわけでブログのタイトルも「仕事」から「しごととくらし」にしました。

さて、2024年の最初に読んだのはこちら。

サブタイトルに「個人用クラウドで、仕事と生活を一変させる」とあるように、クラウドを活用して個人の知的生産スタイルをアップデートしていくための方法が書かれています。メモの取り方についての本かと思ったのですが、そうではなくて取ったメモ(つまり集めた情報)を保存・整理・活用するためのシステム構築について書かれていたのです。GmailGoogle ドキュメントを活用して、自分にとって必要な情報を記録し効率的に引き出す仕組みを作っていきます。

最初の方に簡単に始められる方法として次のように書かれています。

 メールの送信欄を開いて、自分宛のメールの下書きを作成します。そして、これを下書きのまま保存します。
 後でこの下書きを開いて、追加したり、編集したりすることができます。これだけでTODOメモや日記などに、便利に使えます。

確かにこれならかなりハードルが下がります。そこから出発して添付ファイルを組み合わせたりラベル付けをしたりして徐々に拡張していくと、これだけでもけっこうなことができそうです。

クラウドに保存し検索可能にしておくことのよさが実感できると、さらに次のステップに進む意欲が湧いてくることでしょう。同様のことはスマートフォンのメモアプリを使って始めることもできそうです。その先も GmailGoogle ドキュメントでなく他のクラウドサービスでも実現可能です。必要なのはとにかく始めること、そして蓄積していくことです。継続するうちに自分だけのシステムができあがることでしょう。同じ筆者による『「超」整理法』で提案されていた「押し出しファイリング」と同じように。

振り返ってみると、紙ベースで仕事をしていたときに、情報の整理に一番役立ったのが『「超」整理法』です。学校はまだまだ紙ベースでの仕事がしばらく残るでしょうから、これから読んでもきっと役立つことと思います。

さらにさかのぼると、個人の知的生産に関わる本で忘れられないのが『知的生産の技術』でしょう。大学の授業で取り上げられて読み、かなり影響されました。山ほどB6カードを買い込んだのを思い出します。

ここまで紹介した本を「何を使うか」という視点で整理してみると次のようになります。

二十数年程度のスパンで環境が大きく変化しているのでしょうね。次に加わるのは AI ではないでしょうか。

読む力 最新スキル大全

非常に多様な情報源から、世界観を形成するために有用な質の高いものを選び抜くために、著者が実践している方法を紹介している。

ただ、やり方をそっくりまね(できる部分もあるが)しても、同じような成果が得られるわけではないだろう。著者の力の源泉は、その方法を自分のものにするために試行錯誤を繰り返し、どうすれば自分の知的生産が効率的に進められるのか、自分自身の営みを見つめて形にしてきたプロセスにあるからだ。

そういう意味では、本書に示されたツールや方法を著者がどんな視点で取り入れたのか、そこに注目して「自分ならどうするか」を考え、実践していく材料にするのが有効なのだ。

SNS、新聞、ネットニュース、本といったさまざまなメディアから何をどう読み、整理・保存し、自らの知の構造に組み入れ、アウトプットするか。その一連のプロセスをシステムとして捉えているところがとても参考になった。これまで個別に何となくやってきたことを、改めて全体の関連において位置付け、構成し直してみたいと思った。 str.toyokeizai.net

iPhone のメモアプリをスキャナ代わりに使う

iPhone の標準メモアプリ、最近になってその便利さを知りました。紙の書類をカメラで撮影して取り込む機能は「もっと早く知っていれば!」と思いました。

toyokeizai.net

この記事の最後にある「Gmail に同期する」というのがよくわからなかったので調べてみたら、この記事 ↓ のようにすればいいみたいです。

japanese.engadget.com

また、メモをPDF化することもできます。

www.lifehacker.jp

↑ の記事のように「マークアップ」をタップする方法の他に、プリント画面でプレビューをピンチアウトする方法もあります。

www.ipodwave.com

メモに取り込んだ書類はOCRで検索の対象になります。手書きのものも多少雑に書いていても認識するのがすごいところです。メモアプリ、あなどれません。これからもきっとどんどん進化していくことでしょう。