「明日」をつくる仕事。

小学校でのプログラミング教育の普及に取り組んでいます。

学校にモダンブラウザを!

 Scratch が3.0にバージョンアップされました。以前からアナウンスされていたことですが、Internet Explorer (以後、IEと表記) ではログインすることすらできなくなりました。実際に目の当たりにして初めてそのことの意味がわかったという向きもあるのではないでしょうか。f:id:takeya_masaaki:20190211183735j:plain:w320:right
 そんなことがあって、学校で使われているWebブラウザについて改めて考えてみたいと思って Facebook に投稿したところ、たくさんのコメントをいただきました。いろいろと学ぶことが多く、友達限定公開ではもったいないと思って、まとめたものを加筆修正した上でブログに投稿しました。
 この投稿で言いたいことは要するに、「学校現場で広く使われている IE では学習に支障が出るので、 Edge や ChromeFirefox などのモダンブラウザを使えるようにしてほしい」と言うことです。
 以下、なぜそのような状況が起きているのかという背景について述べたいと思います。

関連するソフトウェアやコンテンツの要因

 広く使われている授業支援ソフトや学習ソフト、デジタル教科書の動作環境に IE だけが記載されていることがあります。かなり以前から使われているので、初期には IE だけに対応していれば問題はなかったのでしょう。その結果、教育関連については、フィルタリング機能や遠隔管理の仕組みといったものなどが IE に特化して開発されることになったのではないかということが考えられます。
 しかし、Web関連の技術が急激に発展していく中で、かつては事実上の標準だった IE も独自の拡張を重ねて来たことが裏目に出るようになってしまいました。その辺りの事情についてはこちらのページなどに書かれています。→ 未だに残るレガシー IEの功罪:Mostly Harmless:オルタナティブ・ブログ
 今後、HTML5 の普及がさらに進むことはまちがいないでしょう。他のブラウザは対応の状況が進んでいて、MicrosoftIE から Edge への移行を推奨しています。→ Internet Explorer の今後について – Japan IE Support Team Blog
 Web 上の学習コンテンツも HTML5 で作成されたものが多くなってくるはずです。ということは IE を標準ブラウザにしていることで支障の出る場面が増えてくることが予想されます。だから、さまざまな教育用ソフトウェアやコンテンツの方が新しいブラウザに対応できるように開発を進めればいいのではないかと単純に思ってしまうのですが、事はそう簡単ではないようです。対応するために修正する箇所が膨大にあり、動作保証するためのテストがものすごく多くなってしまってコストが利益に見合うものではなくなってしまうことが予想されます。教育市場は薄利多売のビジネスモデルで、開発予算が限られているという話もあるようです。

教育委員会と導入業者の要因

 さまざまな製品が IE での動作を前提としているにしても、ブラウザを複数インストールして使い分けるという方法もとれます。インストールするまでもなく、Windows 10 の標準ブラウザは Edge なので使い分けができるはずなのですが、自治体によっては LTSB という形態で運用しているところもあるようで、そういう場合は IE しか使えない環境になるようなのです。→
Windows 10 コラム 第2回 「Windows 10 Enterprise vs Enterprise LTSB」 | NTTデータ先端技術株式会社
 このようなことが起きる背景については次のようなことが想像されます。業者としては前述したような開発サイドの事情があって既存の環境を引っ張る方向に動く。教育委員会の担当者は専門的な知識が十分ではないことがあると言われたとおりかトラブルを恐れてそれ以上に制限をして各学校が使う環境を設定してしまう。このようにそれぞれの立場や思いが絡んでいるのではないでしょうか。

学校や教員の要因

 先生方はとても忙しいので、学習コストをかけて新しいことを学ぶにはそれなりのリターンがなければ動きません。ブラウザを変えてもさほど大きく変わるわけではないのですが、それでも細かな操作が微妙に違うだけでも、「前の方がよかった。今まで使えていたのだから戻してほしい。」とおっしゃる方はおられます。また、複数のブラウザをインストールできたとしても、この場合にはこっちのブラウザ、別の場合にはあっちのブラウザ、というように使い分けなくてはならないことになり、混乱してしまうこともあります。
 そもそも学校で ICT を活用する機会が少なく、そのメリットが享受されていないので、ブラウザの問題は優先順位が低いということも考えられます。ふだんから活用している学校では、ブラウザが古いままだと見られないサイトが出てくるために対応の必要に迫られます。例えば、調べ学習によく活用される「Yahoo!きっず」は、古いブラウザでは見ることができない場合があるということです。ほとんど使っていない学校では、こういうことにも気付かなかったりあきらめてしまったりしているのでしょう。それでなくても本来、OS やブラウザはセキュリティを確保するために最新のものにアップデートすることが求められるはずなのですが、そのことの意味や重要性についての認識が低いために対応が進んでいないことが見受けられます。

今後に向けて

 さて、さまざまな要因を挙げてきましたが、これらは独立しているのではなく相互に関連し合っています。その結果、学校では開発が終了している IE が主なブラウザとして使われ続けています。この状況はこれから1~2年で変わることはないでしょう。しかし、子どもたちにとってよりよい学習環境を提供するために、関係する人々が問題を適切に認識し、それぞれの立場で努力を重ねていく必要があります。まずはどんなことができるでしょうか。私はこの情報を発信し、可能な限り拡散していこうと思います。ただ、これまでいろいろな方に情報を提供していただいたおかげで、そう簡単な話ではないということがわかってきました。ご理解いただける皆さんと、根気強くできることを模索していきたいと思います。子どもたちの未来のために。

全面実施まで1年半 現場の受け止め方は?

 新学習指導要領の全面実施まであと1年半となりました。小学校でのプログラミング教育の普及には、それを直接担う先生方の必要感の醸成がなくてはならないと思います。これまでいろいろなところに研修で伺って、たくさんの先生方とお会いしてきましたが、実際どうなのだろうと思うところもありました。
 そこで、SNS上で小学校の先生方や関わりのある方々に、直接見聞きした事例を中心に、現時点での受け止め方を伺ってみました。すると、とても参考になるコメントをたくさんいただくことができたので、ざっくりとですがこちらでもご紹介したいと思います。実際にはもっと幅広く深い内容なのですが、不特定多数の方が目にするブログの特質もあり、かなり削ぎ落とされた記述になってしまうことをご容赦ください。(本当は私のまとめる能力の限界なのですが…)

 まず第一に、全体として必要感は高まってきているが不安を感じているという先生が多いようです。

  • みんな手探りだが、確実に去年よりも「まだうちは…」と言うところが少なくなっている
  • 否定的な雰囲気はないが、何をどのようにやればよいのかはっきりしないので二の足を踏んでいる
  • いくつかの学校で研修会をしたところ、初めて聞いたという人はほとんどいなかった

 第二にその不安は「よくわからない、見通しが立たない」というところから来ている部分が大きいようです。

  • 自分のところでは全く話題になっておらず、他県に勤める友人から情報を聞いて取り組み始めようと思った
  • そもそもパソコンに不慣れだったり拒否反応を示す先生もいる
  • 新学習指導要領にどのようにプログラミングについて記載されているかあまりよく知らない先生もいる

 第三に、小学校では各教科等の特質に応じてプログラミングを体験するとされていることがハードルを上げている面があるようです。

  • 管理職から「授業でやるイメージがわかない」と言われた
  • 具体的にどんなことをすればいいのか、事例を教えてほしい
  • どんな準備をすればいいのか分からない
  • 道徳や英語は教科として時間数も明確に示されているが、プログラミングはそうではないので優先度を下げているのでは

 第四に、環境や研修も十分ではないということがうかがえます。
- 子どもたちの方が教師より分かっていて難しい質問をされるのが怖い

  • 保護者から先生方に聞いてみたところ、「環境が整うのか」「教える知識・スキルがないのに教えられるのか」という不安の声があった
  • 取り組みの障壁になっているのは、予算・授業時間・授業内容それぞれについての見通し

 第五に、そういう中でも不安や疑問を乗り越えて行くには、「対話」の機会を確保することが重要であることが見えてきました。

  • 必要か、必要でないか、本音で議論できる場があることが大事
  • 現場の教員と教育委員会の指導主事や事務方の間にコミュニケーションギャップがあることを感じ、交流ワークショップを実施したところ、立場の違いはあれどそれぞれが子どもたちの将来にとって必要な力を育てたいと考えていることが共有でき、先に進む力になった

 以上のようなコメントをいただき、私なりに見えてきたことやさらに知りたいことも出てきました。そのことについてはまた改めて書きたいと思います。
 また、SNSでコメントを寄せていただいた方々には失礼かもしれませんが、プログラミング教育に関心をもっている方の集まりですので、もしかしたら一定のバイアスが生じているかもしれません。別の場面(このブログのコメントやTwitterなど)でもさらに率直な声をお聞かせいただける機会があれば幸いです。

決まった答えではなく問題解決のプロセスを

 みんなのコードでは、小学校でのプログラミングを取り入れた授業に使える教材「プログル」を公開しています。おかげさまでこれまでに6万人を超える方に利用していただきました。
proguru.jp
 この教材は、授業で使っていただけるように指導案やワークシートを一緒に提供しています。ところが最近、「プログラムの解答手順」がほしいというご要望をいただきました。趣旨としては、苦手な先生にもすぐに使ってもらえるように前もって手順を把握しておくための資料が必要だということです。確かに、後半になると難度も高くなりますし、苦手意識をもっている先生にも使っていただくためには、手順を確実に把握して安心して指導にあたれるようにしたいという気持ちは理解できます。私も現場にいたときに情報教育担当として苦心したことを思い出しました。プログラミングではなく、電子黒板やタブレット端末の活用についてですが。

 しかし、手順書の提供はお断りしました。小学校で教科のに応じてプログラミングを体験させるのは、「正解」プログラムを理解させることをねらいとするものではありません。先生方に「解答集」を示してしまうと、その答えに到達することを目的として学習活動を展開すればよいと思われてしまう危険性もあると考えます。そうではなく、子どもたちがこれまで学習したことを活用しながら、試行錯誤を繰り返して自分たち自身の力で妥当な答えを見出す学習過程こそが、これからの社会を生きていく子どもたちに必要な資質・能力を育てるものとして求められるのではないでしょうか。

 プログルは一般的なツールではなく、特定の単元に特化した教材です。多角形コースでしたら、5年生算数の正多角形の作図を行う学習でご利用されることを想定しています。まずは授業をされる先生が教材研究として事前にご自身で解決することをとおして思考プロセスをたどっておいてほしいと思います。子どもたちがつまずきやすいポイントも把握できますし、苦手な先生ほどわからない子どもの気持ちに寄り添うことにつながることと思います。

 苦手な先生が二の足を踏んでいるようでしたら、学年などで、先生方のグループワークなどをとおして一緒に取り組んでみるといったサポートをされてはいかがでしょうか。与えられた答えではなく、自らの手で解決した経験こそが指導に生きるはずです。そういった営みは、先生方自身にとっても、まさに「主体的・対話的で深い学び」につながるよい研修になるのではないかと思います。

質問にお答えして

 竹谷 正明の質問箱というのを作りました。
peing.net
 次のような質問をいただきました。字数の関係でそちらでは書ききれなかったので、こちらに回答を書くことにします。

「小学校プログラミング教育の手引き(第一版)」の9ページ 第二章 小学校プログラミング教育のねらい ③各教科等での学びをより確実なものとすること というのがあります。 この「学びをより確実なものとする」という意味なのですが、私は教科の時間に学習したことをプログラミング教育の観点からもう一度学習し「学びをより確実なものとする」ということも含まれていると考えているのですが、竹谷先生はどのようにお考えでしょうか。

 私見では、「各教科等での学びをより確実なものとする」ということには、学習過程からすると次の2つのあり方が考えられると思います。
 1つは、おっしゃるとおりこれまで行われてきた各教科等で学んだことを、単元の終わりでプログラミングという方法を取り入れて改めて表現し直してみる、あるいは活用することによって、より理解を確かなものにするということです。新学習指導要領に例示されたものでいうと、理科6年の電気の性質や働きの学習はこちらになるのではないでしょうか。これまでの指導計画に要素を追加する形になりますので、比較的負荷が少なく導入できるのではないかと思います。
 もう1つは、単元の展開に組み込むことによって、従来行われてきた学習活動よりもさらに理解を深められるようにするというものです。算数5年の正多角形をかく学習では、前述の形で実施可能ですが、単元の第1次と第2次の間をつなぐ部分に組み入れることによって正多角形と円の関連をより明確に理解させられるということも考えられます。こちらは既存の指導計画を検討し直す部分が多くなることが想定されるためハードルは高くなりますが、新しい可能性をより広げられるのではないでしょうか。
 各教科等の特質に応じてプログラミングを体験するということについては、これからさまざまな実践を積み重ねていく中から、子どもたちにとってよりよいあり方が見えてくるものと考えています。これからの2年間の移行期間を有効に活用して、正解のない問いにチャレンジしていっていただければと思いますし、私たちもそれを支援していきたいと思います。

NPO法人に転職して1年

f:id:takeya_masaaki:20180405090224p:plain:w320:right30年間勤めた小学校教諭からプログラミング教育を推進する団体の職員になって1年。たくさんの得難い経験をすることができましたし、新しい世界で学ぶことが多い1年でした。年度の切り替わりにあたってちょっとふり返ってみたいと思います。

日の生活でいうと大きく変わったのは通勤と昼食です。通勤は十数年間というもの、自転車で30分以内のところだったのが、徒歩と電車で1時間ちょっとの通勤になりました。満員電車が苦手でそれが最大の不安でした。しばらくなかなか慣れずに時間をかけて各駅停車に乗って行くこともありました。最近になってようやく慣れてきて、圧迫感を感じないですむ車両の位置や乗り込むタイミングがわかるようになったので、大丈夫かなと思えるようになりました。
食は、給食がなくなりました。毎日栄養士さんが献立を考えてくれて、調理員さんが作りたての温かいものを出してくれることの幸せを改めて感じました。初めのうちは毎日外食していましたが、最近は弁当を持っていくようにしています。オフィスは渋谷の繁華街に近いところなので、食べる店はたくさんあります。しかし、健康やコストも気になるところです。弁当だと野菜をしっかり食べられるのと費用も抑えられるのがありがたいです。妻に感謝。ご飯を炊いておかずを弁当箱に詰めるところだけは自分でやっています。ただ、同僚とおしゃべりする時間も大切なので、週1回はランチに出ています。

事内容の面では、相手と場所が変わりました。相手はそれまで小学生だったのが、今はその小学生を教える先生方が中心です。毎日一緒に過ごしている子どもたちとの学習と、初めて会う大人相手の講義・演習とではずいぶん違います。今まで自分のもっているものでやっていける部分もありますが、新しいスキルを高めていく必要も感じています。
所についても本当に大きく広がりました。それまで調布・世田谷・狛江という東京の中でも比較的限られたエリアだけだったのが、札幌や福岡といった遠くにも行く機会を得ました。同じ日本の中でもその土地その土地でさまざまな違いがあること実感しました。飛行機にもたくさん乗りました。また、IT企業のオフィスや、最近では例えば衆議院議員会館といったそれまで縁のなかった建物の中にも入ることができました。そういうときには、ついあたりをキョロキョロ見回してしまって恥ずかしいヤツになってしまうことがあります…

て、年度が替わって新しい仲間も加わりました。
4月みんなのコードではフレッシュな新入社員を迎えました! | みんなのコード
これからの一年、引き続き楽しみながら進んで行きたいと思います。また新しい世界が広がっていると思うとわくわくしています。

可能性を広げる

ブログのタイトルを変えました。何というか、「思い」をこめたものにしたくなって…

 先日、こんなニュースを目にしました。
第31回 東洋大学「現代学生百人一首」入選作品発表 | 東洋大学
その中に、高校1年生が詠んだこんな短歌がありました。

機械化で消えてなくなる仕事知り将来の夢決められずいる

 感受性の高い時期にいろいろと将来の自分について思い悩む心情が伝わってきます。数年後に社会に出て行くことを考えたとき、AIやロボットに取って代わられる仕事がたくさんあることを知り、できる仕事が減ってしまうという不安を覚えたのでしょうか。ちょっと切ない思いを感じました。

 しかし、技術が発達することにより今までなかった仕事が生み出されることも事実です。これから出てくる新しい仕事はコンピュータと何らかの形で関連するものが数多くあることでしょう。*1そして新しく生み出される仕事に携わるためには、従来やっていたこと(文書作成など)をやるためにコンピュータを使うことにとどまらず、コンピュータの特性を理解して今までになかったことにも活用していくことが求められることでしょう。

 そのために小学校段階からプログラミングを体験し、コンピュータが得意なことと人間にしかできないことを見分ける感覚を身に付けておくことはとても重要なことだと思います。そしてそれが広く定着すれば、テクノロジーの本質を理解している多くの人たちが社会を構成することにつながり、大きな強みを発揮することになるでしょう。

 冒頭に掲げた短歌を詠んだ高校生が社会に出るまでに、こんな短歌を詠んでもらえるように変えていきたいなあと思います。

新しい技術でできる仕事知り将来の夢広がっている

*1:レアケースかもしれませんが、「プログラミング教育の普及」という私の仕事なんてまさにそうです。自分自身ですら、数年前には想像できなかったものです。

あけましておめでとうございます

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 昨年は公立小学校の教員からNPO法人への転職という大きな変化があった年でした。幸い、新しい環境にもすぐに慣れ、自分としてはまずまずの仕事ができたのではないかと思っています。
 各地の教育委員会や学校で研修会や研究授業の講師を務め、たくさんの先生方と接することができました。今まで行ったことがない土地に行けたことも収穫でした。プログラミング教育明日会議というイベントや、プログラミング指導教員養成塾という事業でもいろいろな方から学ぶことの多い日々となりました。
 転職という選択が間違っていなかったと思えることも、充実した日々が送れていると感じられることも、出会った全ての方々のおかげです。感謝の思いを常に忘れず、新しい年に向かっていきたいと思います。

今年もよろしくお願いします。