「明日」をつくるしごととくらし

テクノロジーを取り入れた教育の普及に取り組む NPO で働いています。

1セット5過程(3)構造と筆順を知る

 「解」という漢字は「角」と「刀」と「牛」からできています。刀で牛の角を切り離すというところから「分ける・ばらばらにする」という意味を表すということです。なんだかおもしろいと思いませんか。漢字の成り立ちを知ると、漢字に対する興味・関心が高まることにつながります。
 漢字の成り立ちは象形・指事・会意・形声の4通りに分類されます。それぞれの意味については以下のページがわかりやすかったのでご参照ください。
象形文字・指示文字・会意文字・形声文字・漢字の成り立ち
 漢字は部品に分けて覚えた方が効率よく覚えられます。学年が進んでなかなか漢字が覚えられない子の中には、漢字を部品の組み合わせとして見ることができずに、一文字全体で見てしまう場合があります。そのようなときには、漢字の分解・合成のトレーニングを入れてみるのもいいでしょう。例えば、「晴」を「日」+「青」に分けるとか、「青」+「争」で「静」になるといったものです。これを繰り返していくと、「晴」も「静」も「セイ」と読み、「澄みきった」という意味と関連しているという形声文字の理解につながっていきます。漢字の8割とも9割とも言われる形声文字についての理解を深めることは、漢字の学習においてきわめて重要です。
 さて、組み立てがわかったら、筆順を確認します。最初は筆順を声に出しながら空中に指で文字を書くのが効果的です。「中」は4画ですが、2画目は折れがありますので、「いち、にーい、さん、しい」のようにほかの画より延ばして唱えます。あるいは、「たて、おれて、よこ、まんなか」のように、動作がわかる言葉にする方法もあります。低学年の場合は後者の方が絵描き歌みたいで楽しくできるでしょう。学年が進むと、先ほど述べた「部品」の見方に沿って一部省略することもあります。その例については、以下の記事をお読みください。
漢字の筆順指導・学習指導要領 - 日本の教育は、これでよいのかな - 楽天ブログ(Blog)
 漢字を何回も書くだけの練習では力がつきませんが、繰り返し書くことはやはり必要です。筆順がわかったら、空中や机の上に指で書いてみたり、手本の漢字を指でなぞり書きしたりするといいでしょう。このような「空書き」をしたあとに、実際に鉛筆を持って書く練習をします。漢字ドリルや漢字スキルという教材を使って行うことが多いと思いますが、最初は薄く印刷されている漢字をなぞるところから始めることと思います。そのときに私は、「ゆっくり脱線しないように書く」ということを大切にしています。「ていねいに書きなさい。」と言っても「ていねい」とはどうすることなのかがわかっていない子はいるのです。具体的にわかる言葉で言ってあげることが大切です。
 最後に、筆順については広島大学の松本仁志准教授による以下のような論述があります。
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 私たちが「正しい筆順」と考えているのは、前掲の『筆順指導の手びき』という基準書に示された筆順ですが、同書では、あくまで指導上の配慮から基準として提示するにすぎないとの立場をとっています。しかし、この点についての理解が欠けて、基準としての筆順はいつしか「正しい筆順」として教育現場に浸透していきました。結果、記憶の正誤判断を強いるだけの筆順テストがまかり通るようになりました。
 機能性を根拠とするという考え方が主流の今日においては、筆順を暗記させることよりも、文字を書く過程において、「整え易さ」等の機能的要素を子供たちに実感させることが肝要です。文字によっては、そう実感できる筆順が複数あっても不思議はないのです。

 筆順を指導するときに「縦から書いても横から書いてもいい」などと言うと、子どもたちは混乱しますし字形も整わなくなるので統一することが必要ですが、絶対視する必要はないということを頭のどこかに置いておきたいと思います。