「明日」をつくるしごととくらし

テクノロジーを取り入れた教育の普及に取り組む NPO で働いています。

新年度が始まりました

今日は始業式・入学式。新しい年度の始まりの日です。
私は今年度も狛江市立狛江第五小学校でお世話になります。
算数指導担当と5年生の副担任になりました。
また,東京都の教育研究開発委員(情報教育)に出させていただきます。
そして狛江五小は算数で研究発表をします。
与えられた課題がいろいろありますが,一つ一つしっかり取り組んでいきたいと思います。
今年度もどうぞよろしくお願いします。

震災から4年

今日,東日本大震災から4年が経ちました。Webで書いたものを元にして,ふり返ってみたいと思います。

まずは震災の翌日に書いたもの。読み返してみると,そのときの情景がよみがえってきます。こうやって書き残しておくことは大切だなあと改めて思います。

1年後は気仙沼にいました。日曜日だったので,気仙沼港に行って考えたことを書きました。この1年間は自分にとって大きなものでした。

2年後。ブログよりもFacebookで情報発信をすることが多くなりました。気仙沼に行った経験をどれだけ生かせているんだろう。そんな自分に対する疑問が大きくなってきました。

3年後。もっと取り組みをしていかなくてはなどと書いていますが,結局何ができたのか。何をしてきたのか。

4年経って自分がやっていることはどんどん小さくなっています。これではいけないと思いつつも,新たに踏み出す力が出ずにいます。それだけに,ずっと継続して復興支援に関わっている方々のすばらしさを改めて思います。せめてそういう人たちの力になれれば。復興にはまだまだ長い時間がかかります。自分の力は小さくても,だめだとあきらめずに続けていくしかないのだと,前を向いていきたいと思います。

子どもの「困り感」を低減するiPadの活用

 昨日,「魔法のワンド」成果報告会に参加してきました。「魔法のワンド」とは,携帯情報端末を活用して障害をもつ子どもの学習や社会参加の機会を増やすことを目指す「魔法のプロジェクト」の取り組みの一つです。

魔法のプロジェクト | 障がいを持つ子どものためのモバイル端末活用事例研究

私はこの中の一つの事例をお手伝いしました。その中で学ぶことも多かったのですが,成果報告会でいろいろな先生の話をうかがって,さらにたくさんのことを学びました。特別な支援が必要な子どもに限らず,通常の学級にも「困り感*1」をもっている子どもは必ずいます。そんな子どもたちがiPadを使うことで読み書きが楽になったり,見通しがもてて安心できたりすることにつながるといった20の事例が発表されました。発表のスライドは以下のリンクからPDFファイルをダウンロードすることができますのでご覧ください。

魔法のワンド 成果報告会公開資料 | 魔法のプロジェクト

 学んだことや考えさせられたことがいろいろあり,まだ消化し切れていません。自分のメモのつもりで書き連ねますので,意味が分からない点が多々あると思いますが,ご容赦ください。

  • 出発点はその子の夢や希望。そこから自主性や意欲を引き出すことができ,学びの成果につながる。
  • その子の夢をどうつかむか。どう引き出すか。どうもたせるか。
  • iPadをその子の学習や生活で使うと,どんなメリットやデメリットがあるのかを明確にし,保護者にも理解してもらう必要がある。
  • その子の成長につながるビジョンやプランがないままに導入してもiPadは動画サイト閲覧マシンになるだけ。
  • 導入時に「学習に使う物」という意識付けをして子どもに渡す必要がある。
  • 成果が上がったといっても,限られた場面にだけ有効なのであれば,何万円もする機械をそのためだけに使うことにどれだけ意味があるのか。
  • その子の能力を正しく見出せない,どこに困難を感じているのか正しくつかめない,どんな支援をすれば有効なのか考えられないということは極論すれば罪であるとすら言えるのではないか。
  • 教師が自分のストーリーで子どもの状況を見取ろうと(無自覚に)してしまうことがある。謙虚に見つめ直すことが必要。
  • 子どもがiPadを使っていくうちに自分で「こうすればいいんだ」という方法を身に付けることができれば,それはいろいろな場面で役立つ力になる。
  • 要求レベルはその子の状況に合わせる必要がある。しかし,通常の学級では周囲の子への指導との整合性に悩むことがある。学級の中でどう納得感を形成していくか,工夫する必要がある。
  • できないから課題のレベルを下げると,そのことが子どもの自尊感情を低下させる。
  • 楽にしてあげることで実力を発揮できるようになる。しかし,教師は「楽をさせると怠けてしまうのではないか」という心配をするようになる。
  • 診断ベースで教育を進めることの弊害が生まれている。いくら診断名をつけても改善につながらないのなら意味がない。
  • 「バリアバリュー」という言葉がある。障害をもっているからこそ気付くことがある。できなかったことができるようになったとき,その人だけに分かることがある。その価値を共有していこう。
  • 子どもの「恥ずかしい」という言葉の中には,こわい,不安,困っているといった感情が内包されていることがある。
  • 障害理解教育は一時間の授業だけでは成立しない。その後の生活の具体的な場面で子どもに気付かせたり考えさせたりすることが必要。疑似体験も体験で終わらず,「どんなふうにしてほしかったか」などを書かせて話し合う活動が重要。
  • 自己理解が進み,周囲の理解も深まると気持ちが楽になり,前向きになる。

*1:「困り感」は学習研究社登録商標です。

ブラタモリに学ぶ授業の発想

 3年ぶりにブラタモリが復活しましたね。以前のシリーズも好きで欠かさず見ていました。先日放送された「京都」は,「琵琶湖疏水」「御土居」「新京極通」の3つの視点で歴史の痕跡をたどっていました。見えないものを見る想像力や知的好奇心がくすぐられました。4月からのレギュラー放送が楽しみです。一点残念だったのはパートナーが久保田アナではなかったこと。絶妙のコンビになっていると思うのですが。東京周辺を取り上げるときには復帰してくれることを切望します。

 さて,そのブラタモリのプロデューサーが書いた本を読みました。

時代をつかむ!ブラブラ仕事術

時代をつかむ!ブラブラ仕事術

番組制作の裏話がいろいろ盛り込まれていておもしろかったのですが,自分の仕事である授業づくりについて示唆が得られたので,そのことを書こうと思います。

 楽しい授業は子どもの興味関心を引く導入に始まります。何をどう取り上げるか教師のアイデアが問われるところです。どうしたら子どもがおもしろいと思えるだろうか。何か特別なものを持ってこなくちゃだめなんじゃないか。そんなふうに考えてしまいます。
 しかし,尾関さんは「面白さは『当たり前』の中から探す」「『面白い』ことというのは,周りに存在しないのではなく,実は見えていないだけで,見つけ方によっては見えてくるものだ」と書いています。確かにブラタモリのおもしろさは,海外の絶景などではなく,日常何気なく見ている風景をちょっと視点を変えて見てみることによってそれまで別々だったものごとがつながってくるところにあります。
 では,どうしたらおもしろさを見つける力が高まるのかというと,尾関さんは次のことを挙げています。

  • 「面白い」ものを探すのではなく,何かに「気づく」機会を増やす
  • 当たり前だと思っていることを実際に自分の目で追ってみる
  • 「気づく」ためのコツが「目線」を変えること
  • 疑問を持つ努力をする

 ここまでで第一章です。第二章以降もヒントになりそうなことがいくつもありました。授業づくりという観点でなくても考え方や仕事の進め方でも参考になる本です。

あけましておめでとうございます

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 ブログの記事を書いていないとは思っていたけれど,昨年5月以来だったとは思っていませんでした。Facebookの友達向けに情報発信をすることがメインになってしまっているので,ブログの方にまで手が回らずにおります。しかし,ある程度まとまった文章を書くにはブログという場が適していると再認識した次第です。今年はもう少し自分の仕事について広く情報発信していきたいと思います。2015年,改めましてよろしくお願いします。

 昨年は算数少人数担当として,3~6年生の算数を教えることになりました。今までに算数教育をしっかり勉強していなかったので,学習を進める中で算数のおもしろさや奥深さが今ごろになって分かってきたところです。校内研究も算数科で,3~6年の研究授業4本に関わりました。多くの学年と関わると系統性もよりよく見えてくるものですね。学級担任で算数を教えていると,ついついその学年のことだけしか見えなくなってしまいますが,今は専科として違った目で見ることができ,いい機会に巡り会えたと実感しています。

 ICT関連では,狛江iPad導入から2年目を迎え,試行錯誤の段階からどう定着させていくかを考える段階に入ってきています。こちらの面では学級担任の方がいろいろな実践に取り組みやすいところがあり,若干の難しさを感じています。そういうこともあって,昨年は新たな実践を進めるよりも今までの実践をまとめて外に向けてお伝えするということが中心になったように思います。5月には
EDIXという場でタブレットと電子黒板をリンクさせた模擬授業をしました。また,8月にはここ数年続いている千葉市の情報モラルの研修会に招かれ,ここでも模擬授業をしました。

 今年も算数についてさらに研修を進め,子どもたちの思考を深め表現力を高める楽しい授業づくりに励んでいきたいと思います。また,ICT教育や情報モラル教育について工夫して新しい実践に取り組み,成果を発信できるようにしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

書画カメラとワイヤレス・ペンタブレットの活用

狛江市のICT環境

f:id:takeya_masaaki:20140525161024j:plain,right,w360 昨日はiPadの導入について書きましたが,狛江市ではそれ以前に小学校の全普通教室に書画カメラ「みエルモん」とワイヤレス・ペンタブレット「かけるもん」が導入されていました。教室に常設されているので,使いたいときにパッと使えるのが魅力です。

書画カメラとワイヤレス・ペンタブレットの活用

 毎日のように使っているのが,教科書の拡大表示です。従来は「教科書○○ページの上の方にある図を見ましょう。」と言っても意図したところを見ているかどうかはっきりしない場合がありましたが,みエルモんを使って大型テレビに表示すれば,子どもたちの視線で見ているか見ていないかが明確に分かります。かけるもんを使って注目させたいところを囲むなどすれば,さらにはっきりします。
 教師の教材提示だけでなく,子どもたちが教科書の図や,自分でノートやワークシートに描いた図を使って自分の考えを説明することもできます。さらによい書き方をしているノートを全員に提示することによってノート指導に役立てることもできます。

思考を深める授業

f:id:takeya_masaaki:20140525161811j:plain,right,w360 みエルモんで映したものは静止画を撮影することができ,撮影した画像と今カメラで映しているものを並べて表示することができます。右の写真は同じものを映しているのでわかりにくいのですが,左が撮影した画像,右が今レンズの下にある画像です。そしてそのそれぞれにかけるもんで書き込みをすることができます。このようにして比較することによって共通点や相違点を見つけたり,そこに文章や式・記号などを書き込んだりすることで,子どもたちの思考を深めることにつなげていきます。
 書き込みは赤と青が同時に使えます。切り替え操作をすれば黒も使えます。今まで使ってみて,同時に2色使えれば十分だと感じています。また,みエルモんには他にもさまざまな機能が備わっていますが,基本機能をしっかり使うことが大事だと思います。
 電子黒板やデジタル教科書,タブレット端末をそろえるには多額の経費がかかりますが,それに比べれば書画カメラとワイヤレス・ペンタブレットは少額ですむことと思います。しかし,その効果は大きいものです。PCの操作に不慣れな先生でもすぐに使いこなすことができるという点もメリットです。授業づくりのノウハウをたくさんもっているベテランの先生がお使いになる方が効果が大きいと思います。今まで拡大コピーなどをして手間をかけて準備していたものが,映せばいいだけになるとしたらその分の時間を別の教材研究などに回すことができます。
 今後もぜひ毎日活用してきたいと思います。