「明日」をつくるしごととくらし

テクノロジーを取り入れた教育の普及に取り組む NPO で働いています。

子育てに科学という道具を

子どもにとってよいことかどうかを科学的根拠(エビデンス)に基づいて考えようという本です。
子育ての真っ最中の保護者のみならず、教育現場で毎日奮闘する教師、そしてそうした人々に関わるすべての人におすすめします。 booklog.jp 章立ては次のようになっています。

  1. 勉強は子どもを幸せにすることもあるが、不幸せにすることもある
  2. 結局、「叱る」は大人の負け
  3. ほめるのはタダだが、技術が必要
  4. 「学校は社会の縮図」ではない
  5. 経験則は使っていいときとそうでないときがある
  6. 「子どものやる気が問題だとする考え」が問題
  7. 思春期はリスクがあるが、おもしろい
  8. 成功のカギは「実行機能」にあり
  9. 「感覚」は、使えるけれど見えにくい
  10. 子育てを楽しめる状況をつくる
  11. 発達障がいは「理解」が大切

どの章も参考になるのですが、ここでは 2 と 3 の「叱る」と「ほめる」について、そして 5 の「経験則」を取り上げます。

「叱る」と「ほめる」について、行動分析学をベースにした対応として、不適切な行動を減らし、適切な行動を増やすにはどうするかについて述べられています。ある行動を増やす(強化する)要因を好子、減らす(弱化する)要因を嫌子といいます。叱っても不適切な行動が減らないのであれば、叱ることが嫌子として働いていない、つまり意味がないことになります。それどころかさまざまな副作用を生じさせてしまうのです。どのような副作用があるのか、何となく思い当たることがあるのではないでしょうか。また、ほめることも好子として働かせるには即時性・明示性・具体性・多様性といった要素があります。さらに適切な方向で強化するには、「機能分析」という考えが重要になります。詳しくは本書で確認してください。

「経験則」については、単に科学的でないと否定するのではなく、経験した人の主観(感情や感覚)をもとに語られるからこそ、説得力をもつという強みをもつとしています。ただ、個人の特性やそのときの状況による影響が隠れていることが多く、むやみに一般化するのは危険であり、偏っている可能性などのリスクを大人の側が十分に認識して扱うことが必要だということです。

本書は、子育てや教育の現場で日々直面する課題に対し、科学的根拠に基づいた具体的な解決策を提供してくれます。この本を通じて、子どもたちを支えるための新たな視点と具体的な方法を得ていただければ幸いです。