「明日」をつくるしごととくらし

テクノロジーを取り入れた教育の普及に取り組む NPO で働いています。

タイプに合わせてほめる

 せっかくほめたのに、相手の反応が思わしくないなんていうことはないでしょうか。たとえば、帰りの会でクラスのみんなの前で「○○さんは〜〜してすばらしいね。」と賞賛しても、本人はうれしそうな顔をするどころか、表情は曇ってしまうばかり。その後の行動をみてもほめた成果がどうも現れるように感じない…
 もしかしたら、その子はみんなの前でほめられるのはイヤなのかもしれません。休み時間の廊下で周りの人が聞いていないときに同じことを言われたら、にっこりするかもしれません。言葉は同じであっても、状況によって受け止め方が違ってくるということはあるものです。大切なことは「相手がほめられたいようにほめる」ということなのだと思います。この子はどんなことを言われたときに表情が輝くだろう、この子はどんな状況でほめられたらその後の行動が変わるだろうということがつかめたら、どんなにいいでしょう。そのためには一人ひとりの子をよく観察するしかありません。
 どうほめれば自分が相手を大切に思っているということが伝わるのかという点で私が今までに一番参考になった本を紹介します。

「ほめる」技術

「ほめる」技術


 タイトルはそのものずばりという感じですが、小手先の技術を紹介している本ではありません。この本では「ほめる」よりも大きな概念として「アクノリッジメント」という言葉を使っています。とても大切な考え方で、大きく影響を受けました。私が「コーチング」を学びたいと思ったきっかけの本でもあります。いろんな事例からアクノリッジメントの大切さ、それを相手に伝えるための方法が書かれています。ビジネスパーソン向けの内容ですが、教育現場にも適用できることばかりです。ぜひ一読をおすすめします。
 ここからは主にこの本の第4章の内容を紹介します。みんなの前でほめられたいタイプか、個別にほめられたいタイプかということと関連するかもしれませんが、コーチングでは人のタイプを大きく4つに分けています。

  • コントローラー 人や物事を支配していく
  • プロモーター 人や物事を促進していく
  • サポーター 全体を支持していく
  • アナライザー 分析したり戦略を立てたりしていく

きっちりこの4タイプに分けられるということではなく、他の要素も持っているけれど、どれかの傾向が強いということなのです。ご自分がどのタイプに属するかはこちらのテストで診断する*1ことができます。私の場合は以下のような結果が出ました。

コントローラーの点数:1
プロモーターの点数:3
サポーターの点数:2
アナライザーの点数:-2

タイプは
プロモーター
です

 では、相手の行動などからどのタイプかがわかったら、それに合わせてほめることを考えていきましょう。
 まず、コントローラーの場合ですが、大げさにほめたりその人自身をほめたりすると(おだてて自分を思い通りにしようとしているのではないか)という疑いをもたれてしまいます。コントローラーは支配されるのが嫌いなのです。その人が属する集団やその人の周囲をほめるというのがよいでしょう。
 次にプロモーターですが、どんなほめ言葉でもいいのでとにかくほめることが必要です。しかし、逆に否定されることに弱いので、もし不十分なところを修正したいのであれば、どんな小さなことでも肯定できるところを見つけて、その良さを伸ばしたいのであればもっとこうした方がいいとアドバイスしていくのがいいでしょう。
 そしてサポーターの場合は、やっていることを認めているよというメッセージを頻繁に伝えることが必要です。陰で努力をしますが、そのことを認めてほしいという思いは外に出しません。しかし、自分のやっていることを見ていてくれるのかどうかをとても気にしているのです。うっかり認めていることを伝えないでいると、急にため込んでいたものが堰を切ったようにあふれて思いがけない行動にでることがあります。
 最後にアナライザーですが、このタイプが一番難しいかもしれません。アナライザーにあまり深く考えないで単純なほめ言葉を投げかけると、「この人は本当に自分のことをわかっているのだろうか」と逆に不信感をもたれるかもしれません。具体的にどこがよいのかを明確にしてほめることが必要です。そしてアナライザーと話すときにはできるだけ時間を与えるのがよいでしょう。自分の考えをできるだけ正確に伝えたいと考えているからです。難しいと書きましたが、「あなたに配慮しているよ」ということが伝わり、信頼感を勝ち得ることができれば、またとない味方になってくれることでしょう。
 この後に続く第5章でも相手に合わせて円滑なコミュニケーションを図るためのポイントが書かれています。子どもに接するときだけでなく、同僚と接するときにもきっと役に立つことがあるでしょう。
 相手のことを考えもせずにやたらにほめても、こちらの気持ちは伝わりません。しっかりと心を伝えたいならそれなりの技術を身につけることです。技術ですから、失敗しながらも繰り返し繰り返しトライしていくことで向上していきます。
 もちろん、その根本に相手を大切にしたい、よりよく変わってほしいという心がなければ意味がないことは言うまでもありません。

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*1:簡易版ですので、より確実に診断するには、[http://aaa.coach.co.jp/products/prod_det.php?prod_c=251:title=タイプ分け for Coaching]を購入するとよいでしょう。