アメリカの神経学者が書いた本です。原題は"Descartes' Error"(デカルトの誤り)。「我思う、ゆえに我あり」という言葉で有名なデカルトの心身二元論およびそこから派生した現代科学の底流にある考えに対して、身体・脳・心は分離して考えることのできるものではなく、相互に関連させた有機体的な視点が必要だということを主張しています。
感情と理性、身体と脳は別々のものではなく、相互に作用しあうことによって成り立っているということが述べられていたのが新鮮でした。脳の働きを詳しく調べれば心がわかるということではなく、身体も含めた営みを見ていかなければならないということです。本書の中で述べられている中心的な概念が「ソマティック・マーカー仮説」というもので、人間の推論と意志決定が効率的に行われる過程には、身体・内臓感覚に起因する感情が働いているという説です。うまく説明するのが難しいので、関心をもたれた方は↓のリンクからいくつかのページをご覧になってください。
google:ソマティック・マーカー
「勘を働かせる」という言葉を連想しました。何か経験をする度に、私たちには何らかの身体感覚が生じます。意識・無意識にかかわらず、その場の状況とそのときの感覚が蓄積されていきます。ある場面に出会ったとき、類似した経験と快・不快の感情が呼び起こされ、たくさんの選択肢の中から選択・排除するフィルターの役割をしているというようなことなのではないかと思います。経験に裏付けられた「勘どころ」は、問題にうまく対応していくために必要なのですが、それは言語化することが難しく、仮に言語化したところで感覚として共有できるかどうかは難しいところです。初任者とベテランの違いはその辺りにあるのかもしれません。
- 作者: アントニオ・R.ダマシオ,Antonio R. Damasio,田中三彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/01
- メディア: 単行本
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