「明日」をつくるしごととくらし

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対話型生成 AI 活用 初めのポイント3つ

ChatGPT をはじめとする対話型生成AIが広く使われるようになり、子どもたちにとっても身近な存在となってきました。しかし、この新しいツールになじめず、その可能性に気付かないまま使わなくなってしまうことも見られます。そこで、対話型生成AIを使い始めるとき、特に意識してほしいポイントを3つ挙げます。

1. ウェブ検索との違い

  • ウェブ検索の場合は、検索語を入力すると、関連するページのリストを表示します。表示されたページを一つ一つ開いて、内容が自分の求める情報かどうかを見ていくことになります。その情報は現在ウェブ上に存在するもので、参照される度合いが高い順に表示されます。
  • 対話型生成 AI は、入力された具体的な質問に対するまとまった回答を生成します。対話型生成 AI は、学習したデータをもとに、文脈や意味を考慮しながら、統計的に最も適切な文章を判断して生成します。ここで「判断」というのは、実際には大規模言語モデルによる計算及び推論の結果です。「生成」、つまり作り出しているので、場合によっては事実と異なる文章が出力されることもあります。
  • 対話型生成AIは新しいツールです。私たちは新しいものを理解するとき、それまでの経験をもとにして理解しようとします。その際に似ているものとしてウェブ検索を使うときのように考えてしまいがちです。対話型生成 AI もウェブ検索のように、検索語を基に情報収集するものと捉えてしまうのです。しかし、対話型生成 AI は、検索語を基に情報収集するだけのツールではありません。創造的な文章作成や人間のように自然な対話を実現する可能性も秘めているのです。それぞれの特性を理解し、場面に応じて使い分けることが重要です。

2. 対話を重ねるプロセス

  • 対話型生成AIは、一回の質問で完璧な答えを出すとは限りません。ユーザーはAIと繰り返し対話を行い、質問を具体化したり、追加情報を提供したりすることで、意図した結果に近付けていくことができます。
  • このプロセスを通じて、ユーザー自身も問題解決のスキルを向上させることができます。対話を通じて自分の思考を整理し、AIを補助的なツールとして使い経験を積み重ねていくことは、自分の問いや指示の精度を上げる力を高めることにつながります。

3. 回答は計算の結果

  • 対話型生成 AI には意思も感情もありません。膨大なデータを基にして統計的な計算を行い、最も適切とされる回答を提供しているだけです。
  • しかし、トレーニングによって人間らしく自然な回答が生成されるため、まるで意思や感情をもっているかのように錯覚してしまう可能性があります。とりわけ、子どもたちは AI に人格を求めがちなので、特に注意が必要です。本格的に利用する前に、対話型生成 AI の基本的な仕組みを学習しておくことは必須と言えます。

対話型生成 AI を一問一答で使うのではなく、その回答を批判的な視点をもって改善していこうという姿勢が必要です。多くの場合、回答の正確性を確認することの重要性が強調されますが、これは結果のみに注目する見方です。対話型生成 AI を本当に有効に使うためには、その仕組みとプロセスに焦点を当てることが重要です。対話型生成 AI の仕組みを理解し、特性を踏まえて使いこなすためのプロセスを考えることで、長期的に有用なスキルを身につけることができます。子どもたち(大人も含む)には、対話型生成AIを単なる情報収集ツールとしてではなく、自らの思考を広げたり深めたりするパートナーとして活用してほしいと思います。