「明日」をつくる仕事。

小学校でのプログラミング教育の普及に取り組んでいます。

決まった答えではなく問題解決のプロセスを

 みんなのコードでは、小学校でのプログラミングを取り入れた授業に使える教材「プログル」を公開しています。おかげさまでこれまでに6万人を超える方に利用していただきました。
proguru.jp
 この教材は、授業で使っていただけるように指導案やワークシートを一緒に提供しています。ところが最近、「プログラムの解答手順」がほしいというご要望をいただきました。趣旨としては、苦手な先生にもすぐに使ってもらえるように前もって手順を把握しておくための資料が必要だということです。確かに、後半になると難度も高くなりますし、苦手意識をもっている先生にも使っていただくためには、手順を確実に把握して安心して指導にあたれるようにしたいという気持ちは理解できます。私も現場にいたときに情報教育担当として苦心したことを思い出しました。プログラミングではなく、電子黒板やタブレット端末の活用についてですが。

 しかし、手順書の提供はお断りしました。小学校で教科のに応じてプログラミングを体験させるのは、「正解」プログラムを理解させることをねらいとするものではありません。先生方に「解答集」を示してしまうと、その答えに到達することを目的として学習活動を展開すればよいと思われてしまう危険性もあると考えます。そうではなく、子どもたちがこれまで学習したことを活用しながら、試行錯誤を繰り返して自分たち自身の力で妥当な答えを見出す学習過程こそが、これからの社会を生きていく子どもたちに必要な資質・能力を育てるものとして求められるのではないでしょうか。

 プログルは一般的なツールではなく、特定の単元に特化した教材です。多角形コースでしたら、5年生算数の正多角形の作図を行う学習でご利用されることを想定しています。まずは授業をされる先生が教材研究として事前にご自身で解決することをとおして思考プロセスをたどっておいてほしいと思います。子どもたちがつまずきやすいポイントも把握できますし、苦手な先生ほどわからない子どもの気持ちに寄り添うことにつながることと思います。

 苦手な先生が二の足を踏んでいるようでしたら、学年などで、先生方のグループワークなどをとおして一緒に取り組んでみるといったサポートをされてはいかがでしょうか。与えられた答えではなく、自らの手で解決した経験こそが指導に生きるはずです。そういった営みは、先生方自身にとっても、まさに「主体的・対話的で深い学び」につながるよい研修になるのではないかと思います。

質問にお答えして

 竹谷 正明の質問箱というのを作りました。
peing.net
 次のような質問をいただきました。字数の関係でそちらでは書ききれなかったので、こちらに回答を書くことにします。

「小学校プログラミング教育の手引き(第一版)」の9ページ 第二章 小学校プログラミング教育のねらい ③各教科等での学びをより確実なものとすること というのがあります。 この「学びをより確実なものとする」という意味なのですが、私は教科の時間に学習したことをプログラミング教育の観点からもう一度学習し「学びをより確実なものとする」ということも含まれていると考えているのですが、竹谷先生はどのようにお考えでしょうか。

 私見では、「各教科等での学びをより確実なものとする」ということには、学習過程からすると次の2つのあり方が考えられると思います。
 1つは、おっしゃるとおりこれまで行われてきた各教科等で学んだことを、単元の終わりでプログラミングという方法を取り入れて改めて表現し直してみる、あるいは活用することによって、より理解を確かなものにするということです。新学習指導要領に例示されたものでいうと、理科6年の電気の性質や働きの学習はこちらになるのではないでしょうか。これまでの指導計画に要素を追加する形になりますので、比較的負荷が少なく導入できるのではないかと思います。
 もう1つは、単元の展開に組み込むことによって、従来行われてきた学習活動よりもさらに理解を深められるようにするというものです。算数5年の正多角形をかく学習では、前述の形で実施可能ですが、単元の第1次と第2次の間をつなぐ部分に組み入れることによって正多角形と円の関連をより明確に理解させられるということも考えられます。こちらは既存の指導計画を検討し直す部分が多くなることが想定されるためハードルは高くなりますが、新しい可能性をより広げられるのではないでしょうか。
 各教科等の特質に応じてプログラミングを体験するということについては、これからさまざまな実践を積み重ねていく中から、子どもたちにとってよりよいあり方が見えてくるものと考えています。これからの2年間の移行期間を有効に活用して、正解のない問いにチャレンジしていっていただければと思いますし、私たちもそれを支援していきたいと思います。

NPO法人に転職して1年

f:id:takeya_masaaki:20180405090224p:plain:w320:right30年間勤めた小学校教諭からプログラミング教育を推進する団体の職員になって1年。たくさんの得難い経験をすることができましたし、新しい世界で学ぶことが多い1年でした。年度の切り替わりにあたってちょっとふり返ってみたいと思います。

日の生活でいうと大きく変わったのは通勤と昼食です。通勤は十数年間というもの、自転車で30分以内のところだったのが、徒歩と電車で1時間ちょっとの通勤になりました。満員電車が苦手でそれが最大の不安でした。しばらくなかなか慣れずに時間をかけて各駅停車に乗って行くこともありました。最近になってようやく慣れてきて、圧迫感を感じないですむ車両の位置や乗り込むタイミングがわかるようになったので、大丈夫かなと思えるようになりました。
食は、給食がなくなりました。毎日栄養士さんが献立を考えてくれて、調理員さんが作りたての温かいものを出してくれることの幸せを改めて感じました。初めのうちは毎日外食していましたが、最近は弁当を持っていくようにしています。オフィスは渋谷の繁華街に近いところなので、食べる店はたくさんあります。しかし、健康やコストも気になるところです。弁当だと野菜をしっかり食べられるのと費用も抑えられるのがありがたいです。妻に感謝。ご飯を炊いておかずを弁当箱に詰めるところだけは自分でやっています。ただ、同僚とおしゃべりする時間も大切なので、週1回はランチに出ています。

事内容の面では、相手と場所が変わりました。相手はそれまで小学生だったのが、今はその小学生を教える先生方が中心です。毎日一緒に過ごしている子どもたちとの学習と、初めて会う大人相手の講義・演習とではずいぶん違います。今まで自分のもっているものでやっていける部分もありますが、新しいスキルを高めていく必要も感じています。
所についても本当に大きく広がりました。それまで調布・世田谷・狛江という東京の中でも比較的限られたエリアだけだったのが、札幌や福岡といった遠くにも行く機会を得ました。同じ日本の中でもその土地その土地でさまざまな違いがあること実感しました。飛行機にもたくさん乗りました。また、IT企業のオフィスや、最近では例えば衆議院議員会館といったそれまで縁のなかった建物の中にも入ることができました。そういうときには、ついあたりをキョロキョロ見回してしまって恥ずかしいヤツになってしまうことがあります…

て、年度が替わって新しい仲間も加わりました。
4月みんなのコードではフレッシュな新入社員を迎えました! | みんなのコード
これからの一年、引き続き楽しみながら進んで行きたいと思います。また新しい世界が広がっていると思うとわくわくしています。

可能性を広げる

ブログのタイトルを変えました。何というか、「思い」をこめたものにしたくなって…

 先日、こんなニュースを目にしました。
第31回 東洋大学「現代学生百人一首」入選作品発表 | 東洋大学
その中に、高校1年生が詠んだこんな短歌がありました。

機械化で消えてなくなる仕事知り将来の夢決められずいる

 感受性の高い時期にいろいろと将来の自分について思い悩む心情が伝わってきます。数年後に社会に出て行くことを考えたとき、AIやロボットに取って代わられる仕事がたくさんあることを知り、できる仕事が減ってしまうという不安を覚えたのでしょうか。ちょっと切ない思いを感じました。

 しかし、技術が発達することにより今までなかった仕事が生み出されることも事実です。これから出てくる新しい仕事はコンピュータと何らかの形で関連するものが数多くあることでしょう。*1そして新しく生み出される仕事に携わるためには、従来やっていたこと(文書作成など)をやるためにコンピュータを使うことにとどまらず、コンピュータの特性を理解して今までになかったことにも活用していくことが求められることでしょう。

 そのために小学校段階からプログラミングを体験し、コンピュータが得意なことと人間にしかできないことを見分ける感覚を身に付けておくことはとても重要なことだと思います。そしてそれが広く定着すれば、テクノロジーの本質を理解している多くの人たちが社会を構成することにつながり、大きな強みを発揮することになるでしょう。

 冒頭に掲げた短歌を詠んだ高校生が社会に出るまでに、こんな短歌を詠んでもらえるように変えていきたいなあと思います。

新しい技術でできる仕事知り将来の夢広がっている

*1:レアケースかもしれませんが、「プログラミング教育の普及」という私の仕事なんてまさにそうです。自分自身ですら、数年前には想像できなかったものです。

あけましておめでとうございます

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 昨年は公立小学校の教員からNPO法人への転職という大きな変化があった年でした。幸い、新しい環境にもすぐに慣れ、自分としてはまずまずの仕事ができたのではないかと思っています。
 各地の教育委員会や学校で研修会や研究授業の講師を務め、たくさんの先生方と接することができました。今まで行ったことがない土地に行けたことも収穫でした。プログラミング教育明日会議というイベントや、プログラミング指導教員養成塾という事業でもいろいろな方から学ぶことの多い日々となりました。
 転職という選択が間違っていなかったと思えることも、充実した日々が送れていると感じられることも、出会った全ての方々のおかげです。感謝の思いを常に忘れず、新しい年に向かっていきたいと思います。

今年もよろしくお願いします。

2020年に向けて

 小学校の新学習指導要領の完全実施まで2年4か月を切りました。プログラミング教育は英語教育などに比べ先生方にとってイメージしにくいものです。「2年4か月もある」ではなく、「2年4か月しかない」と考えて準備を進めていただきたいと思います。2020年にスムーズなスタートを切るためには今のうちから準備を進めることが必要です。

 準備する内容については、研修体制・教育課程・環境整備の3つの面から考え、それぞれについて時系列で取り組む段取りを立てていくとよいと思います。例えば以下のようなイメージです。

年度 2017(平成29)年度 2018(平成30)年度 2019(平成31)年度
研修体制 必修化の趣旨について理解を深める 校内での研修リーダーを育成する 校内での研修サブリーダーを育成する
教育課程 実践事例に触れる 実践事例を集める 事例をもとに自校での展開を計画する
環境整備 必要な教材等の情報を集め予算を措置する 段階的に導入を進め中核になる先生が使えるようにする 全ての先生が実際に触れて授業に使えるようにする

研修体制

 研修では、プログラミング教育必修化の趣旨について理解を深めることがまず重要です。社会のあり方が大きく変わって行くこれからの時代を生きる子どもたちにとって不可欠な資質・能力を育てるものであるという認識を先生方がもてれば、自然と主体的に取り組もうという意識につながっていくことと思います。反対に、先生方にとって必要感がもてなければ、よい実践にはつながらないでしょう。
 最初から全ての先生に理解してもらおうと考えてもうまく行かない部分があります。まずは具体的な授業がイメージできる事例を、模擬授業のような形で体験的に理解することが効果的です。そして中心となって取り組むリーダーを育て、校内でプログラミングを取り入れた授業が見られる機会をもてるようにします。身近にモデルとなる存在がいることは、特に若手の先生方にとって重要です。そして次の段階として核となる先生の周りに2〜3名のサブリーダーを育てて、さらにその他の先生方を巻き込んでいくようにしていく体制をつくるというように段階を追って軌道に乗せていく必要があります。

教育課程

 研修と並行して、体系的にプログラミング教育に取り組むための指導計画作成を進めていかなければなりません。小学校の新学習指導要領解説 総則編85ページには、以下のように書かれています。

したがって,教科等における学習上の必要性や学習内容と関連付けながら計画的かつ無理なく確実に実施されるものであることに留意する必要があることを踏まえ,小学校においては,教育課程全体を見渡し,プログラミングを実施する単元を位置付けていく学年や教科を決定する必要がある。(中略)例示以外の内容や教科等においても,プログラミングを学習活動として実施することが可能であり,プログラミングに取り組むねらいを踏まえつつ,学校の教育目標や児童の実情等に応じて工夫して取り入れていくことが求められる。

 ほとんどの先生方が経験したことがなくプログラミングそのものについての理解が十分でない中、教育課程全体の中にプログラミングを実施する単元を位置付けていくことは容易なことではないと思います。「計画的かつ無理なく確実に実施される」ためには、実際の授業を行う先生方にとってプログラミングを取り入れることの意義が理解され、具体的なイメージができている必要があります。そのためには、早め早めに情報を集めて前述のような研修体制を確立するとともに研究授業など実践的な理解の場を設定することが必要です。

環境整備

 また、プログラミング教育の目指すところはコンピュータなどの情報技術を問題解決に適切に活用することにあるのですから、アンプラグドの授業だけで済ませてしまっては不十分です。授業を行うのに必要な機器・設備・教材等の環境を整備することが必要であり、そのための予算措置が必要です。どんなものが必要なのか、自校にとって適切なものはどれかを見極めなくてはなりません。
 さらに、前述の解説87ページには以下のような記述があります。

 加えて,情報活用能力の育成や情報手段の活用を進める上では,地域の人々や民間企業等と連携し協力を得ることが特に有効であり,プログラミング教育等の実施を支援するため官民が連携した支援体制が構築されるなどしていることから,これらも活用して学校外の人的・物的資源の適切かつ効果的な活用に配慮することも必要である。

 学校外の人的・物的資源をいかに活用して教育活動を充実させるかということも「社会に開かれた教育課程」を実現していく上で重要なポイントです。しかし、地域や企業との連携といっても、すぐに学校の実態に合わせた協力が得られるわけではありません。互いに理解を深め、信頼関係を構築していく上では一定の時間が必要です。
 こうして考えてみると、残された時間はあと2年4か月「しか」ないということがご理解いただけると思います。新学習指導要領の完全実施を滞りなく迎えるための準備、皆さん方のところでは着々と進められていますでしょうか。

夏をふり返って

 今年の夏は、日本各地に研修会やセミナーで伺いました。夏休みがまだ終わっていない地域もありますが、大きな移動が一段落したところでこの夏の活動をふり返ってみたいと思います。

 総移動距離(大きなもの、直線距離)は、
東京〜加賀 315km 3往復 1,890km
東京〜鳥取 495km
鳥取〜大阪 145km
大阪〜東京 395km
東京〜札幌 835km 往復 1,670km
東京〜福岡 885km 往復 1,770km
合計 6,365km になりました。改めて見てみると、自分でもびっくり。計算間違いしてないでしょうか。1か月の間に日本国内をこれだけ移動することってなかなかないですよね。うちの代表の利根川はこれを上回っていますので、1万kmいってるんじゃないかな。
 お声がけいただいた皆様、ありがとうございました。おかげさまでまたとない経験ができています。