竹谷の仕事。

小学校でのプログラミング教育の普及に取り組んでいます。

小学校でプログラミング?(その5)文科省有識者会議→中教審答申→学習指導要領

 これまで、IoTやAIにといった技術の進化がもたらす第4次産業革命によってこれからの生活や社会は大きく急速に変化する可能性が高いということについて述べてきました。そういった認識が基になってプログラミング教育の充実という政府の方針が打ち出されたのです。そして、その方針を受けて文部科学省がその具体化を図ることになり、小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議が設置されました。長いので以後「有識者会議」とします。
 この会議は2016年5月13日、5月19日、6月3日の3回開催されました。議事録がWeb上で読めるようになっています。

 そして、6月16日に議論の取りまとめが出されました。

 この取りまとめが、中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会 小学校部会の第7回(6月23日)で取り上げられ、小学校におけるプログラミング教育が12月21日に出された中教審の答申に盛り込まれました。
 そしてそれを受けて2017年3月31日に次期学習指導要領が公示されました。さらに6月21日にその解説が公開されました。
 以上、小学校プログラミング教育必修化について文科省関連の流れをまとめました。

小学校でプログラミング?(その4)人工知能(AI)とは

 AIというと思い出すのは、ドラゴンクエストⅣで採用されたAI戦闘システムです。それまではモンスターと戦うときに個別にコマンドを入力しなければならなかったのですが、ドラクエⅣからは「ガンガンいこうぜ」や「いのちだいじに」という大まかな方針をプレイヤーが決定すればあとは自動的に行動してくれるので楽になりました。しかし一方でプレイヤーの思惑とは違う行動をとってしまい、残念な結果に終わることもありました。
 ドラクエⅣの発売は1990年、今から27年も前のことです。今から考えればAIとは言えないようなものかもしれません。しかし、状況に応じてコンピュータが自動的に動作するという点では現在および未来の人工知能に通じる側面をもっているのではないでしょうか。AI戦闘モードをうまく使いこなすには、どのような要素を元にコンピュータが行動を決定しているのかということを知ることが必要です。また、知っていてもコンピュータ任せではうまく危機を切り抜けられない場面もあります。
 このところ、人工知能という言葉が取り上げられる機会が多くなってきました。技術の発達により、人工知能が身近な場面に適用されるようになってきたためです。以下の記事では医療や自動車、金融、小売などさまざまな活用事例が紹介されています。
pc.watch.impress.co.jp
 この先、人工知能の技術はさらに進化し、ますます私たちの生活の至るところで活用されるようになることでしょう。そのような背景を踏まえ、新学習指導要領の解説・総則編にも冒頭のページで以下のように記述しています。

 こうした変化の一つとして,人工知能(AI)の飛躍的な進化を挙げることができる。人工知能が自ら知識を概念的に理解し,思考し始めているとも言われ,雇用の在り方や学校において獲得する知識の意味にも大きな変化をもたらすのではないかとの予測も示されている。このことは同時に,人工知能がどれだけ進化し思考できるようになったとしても,その思考の目的を与えたり,目的のよさ・正しさ・美しさを判断したりできるのは人間の最も大きな強みであるということの再認識につながっている。

子どもたちがこれから生きていく時代は、「厳しい挑戦の時代」であり、大きく急速に変化するため予測が困難であるとしています。その変化の一つとして人工知能の進化を冒頭に取り上げているのです。
 その人工知能は、コンピュータをプログラムで動かすことによって実現されています。未来を生きる子どもたちにとって、コンピュータが動く仕組みについて基本的な理解を身に付けておくことは必須の素養と言えるでしょう。プログラミングとはどのようなことなのか、コンピュータを人間が意図したとおりに動かすにはどうしたらいいのかということがわかっていれば、機械に振り回されることなく人間にとってよりよい使い方をすることができるのではないでしょうか。そしてそれが多くの人々にとっての常識になっていれば、新しい社会を一部の専門家だけに任せるのではなく、みんなで担っていくことにつながるはずです。
 小学校段階からプログラミング教育を取り入れていくことは、今後ますます人々の生活にとって必要不可欠になるコンピュータという存在について理解し、将来の社会を形づくるための力を子どもたちが身に付けるために必要なことなのです。
 なお、人工知能について理解する上で以下の書籍が参考になりましたので、ご紹介します。

小学校でプログラミング?(その3)第4次産業革命とは

 引き続き、プログラミング教育必修化の背景を理解するために必要な「第4次産業革命」について書きます。「第4次産業革命」という言葉が使われるようになった発端は、2011年に発表されたドイツの「インダストリー4.0」という研究開発プロジェクトです。(参照:インダストリー4.0とは何か?:日経ビジネスオンライン)生産プロセスにデジタル技術を導入して、人件費を減らし生産コストを極小化することを目指しています。では、なぜ「4.0」なのかについてはこのように言われています。(引用元:インダストリー4.0 - 第4次産業革命で、もっとつながる世界 - ドイツ生活情報満載!ドイツニュースダイジェスト

18~19世紀に英国で起きた、蒸気機関の発明による第1産業革命。19~20世紀、石油と電力を活用し、大量生産を可能とした第2次産業革命。そして、20世紀後半からのコンピュータ制御を活用した第3次産業革命。ここまでは、歴史を振り返って名づけられたもの。第4次産業革命は、ドイツ政府が次の時代を見据えて発表した技術戦略「インダストリー4.0」によって、世界に強烈な印象を与えました

これまでも産業にコンピュータを利用して自動化を進めてきましたが、それは個別の制御かネットワークを利用しても単一企業の内部にとどまるものがほとんどでした。しかし、インターネットの爆発的な普及やコンピュータの処理能力の指数関数的向上は生産のあり方も変えようとしています。その代表的なものが「IoT(Internet of Things=モノのインターネット)」であり、「AI(Artificial Intelligence=人工知能)」の利用です。そしてその利用は、生産プロセスばかりでなく社会の仕組みそのものを変えていく可能性を秘めています。
 IoTとは、さまざまなモノ同士がインターネットに接続することによって相互に情報交換し制御し合う仕組みのことを言います。これまでインターネットは、人間がPCやスマホタブレットなどを使って通信し合うためのものでした。しかし、センサーや無線の技術が発達し低価格化が進むことによって、モノそのものがインターネットにつながって互いに通信し合うことが可能になってきたのです。IoTの活用事例には、例えば以下の記事に書かれているようなものがあります。
mayonez.jp
 第4次産業革命を支えるもう一つの大きな柱であるAIについては、また次回書くことにします。

 

小学校でプログラミング?(その2)必修化の提言に至るまで

 前回から半月以上が過ぎてしまいました。このところ、船橋市や杉並区での研修会、指導教員養成塾の入塾式などがあり、そちらの方に意識が行っていました。少し時間があるうちにペースを上げて取りもどしたいと思います。

 さて、前回は産業競争力会議文科省有識者会議→中教審答申→次期学習指導要領という国の動きについてざっと書きました。今回はそもそもの発端になった産業競争力会議での議論を見ていきましょう。
 まず、産業競争力会議についてです。この会議は、日本の産業の競争力強化や国際展開の促進について調査審議するため、内閣総理大臣を議長として関係閣僚と民間有識者により構成された会議です。(参照:さんぎょうきょうそうりょくかいぎ【産業競争力会議】の意味 - goo国語辞書)ざっくり言うと今後の日本のあり方に関わる会議ということです。
 その第26回の会議で馳文部科学大臣(当時)が「発達の段階に即したプログラミング教育の必修化を図る」と発言しました。(配付資料議事要旨)会議のまとめとして安倍首相も言及しています。(→プログラミング教育を小中必修に 安倍総理が提言)政府全体の方針として示されたということです。プログラミング教育必修化はこのときいきなり出てきたわけではなく、2013年に出された成長戦略の素案(46ページ)にすでに盛り込まれています。
 上記の配付資料をご覧いただくと、タイトルが「第4次産業革命に向けた人材育成総合イニシアチブ」となっていて、プログラミング教育は「情報活用能力の育成」に位置付けられていることが分かります。

 ここで私は、「ん?第4次産業革命って何?」と立ち止まってしまいました。プログラミング教育必修化に関するキーワードと思われますので、この言葉について次の記事で改めて取り上げることにします。

小学校でプログラミング?(その1)必修化についての国の動向

…という疑問をおもちの方もおられるのではないでしょうか。普及を進める立場としては理解を得られる努力が大切になります。そのためにこれまでの経緯を改めて整理しておきたいと思います。
 下記のグラフは過去2年間に「プログラミング教育」という語が検索された頻度を表しています。

2016年4月下旬頃から検索されることが増え、今年の1月前半にピークを迎えていることが読み取れます。昨年4月下旬というのは第26回産業競争力会議で初等中等教育におけるプログラミング教育必修化の方針が明らかにされた時期です。昨年5月下旬から6月上旬にかけては文部科学省有識者会議が開催された時期です。一番のピーク、今年の1月前半は昨年末に中教審の答申が出され、年末年始を経て仕事モードになって検索されたのではないかと思います。
 そして2月半ばから3月半ばにかけて改訂案についてのパブリックコメント募集を経て3月末、次期学習指導要領が告示されました。小学校では、今年度が周知・徹底の期間、2018(平成30)年からの先行実施(移行期間)を経て2020(平成32)年に全面実施となります。その学習指導要領では、総則と算数・理科・総合的な学習の時間の中に、「プログラミングを体験しながら」という記述が盛り込まれています。
 少し長くなりましたので、今回は国の諸会議や出された文書について時系列で概観するに留め、次回以降さらに詳しく見ていこうと思います。

「みんなのコード」って何者?

 転職して間もなく1か月。このブログのタイトルは「長老だけど新入社員が書くブログ」にしたらキャッチーでみんな読みますよ、なんて言われるようになった今日この頃、ゴールデンウィークに突入しますが皆さんいかがお過ごしですか。f:id:takeya_masaaki:20170429143235p:plain
 さて、私が所属している一般社団法人みんなのコード。小学校でのプログラミング教育に関心のある人たちの中では有名なんですが、そうでない方々にとっては、「コード?電気工事関係の方ですか?」というように思われるかもしれません。また、私たちの団体をご存じの方でも、「ああ、Hour of Code の普及をしているんでしょ?」というふうに受け止めておられる*1方がけっこうおられます。そこで今回は「みんなのコードはいったい何者なのか」ということを理解していただけるようにしたいと思います。

■組織名

みんなのコード

「みんな」というのはそのままあらゆる人を指しています。「コード」は電線(cord)でも和音(chord)でもなく、記号の集まり(code)のことです。コンピュータを動かすために必要な文字や数字のまとまりのことを言います。「みんな」が「コード」と関われる社会を表しています。

■ミッション*2

すべての子どもがプログラミングを楽しむ国にする

「すべての子ども」…当面は公教育の小学生を対象として考えています。
「プログラミングを楽しむ」…技能や思考を身に付ける前提となるのは関心や意欲です。
「国にする」…一部の地域だけでなく日本全国に広めていくことを目指します。

■今年度の主な事業

いずれも Hour of Code のみにこだわらず、最新の情報を集め、幅広く上記のミッションに沿った活動に取り組みます。

教育委員会・学校での教員研修支援

プログラミング教育必修化の背景についての解説、教材体験、模擬授業などを中心にした構成です。文部科学省有識者会議の議論の取りまとめや先日告示された次期学習指導要領を踏まえた内容を考えています。

・プログラミング教育を推進する教員の養成

「プログラミング指導教員養成塾」と題して、実践的にプログラミング教育を推進し、各地区等で普及の中心となっていただける方の育成を進めます。

・教科の授業で使えるプログラミング教材の開発

特別な知識やインストールの手間などが必要なく、教科の学習内容に特化したプログラミング教材を開発していきます。第1弾の公倍数コースが先日リリースされました。→プログル|学校の授業で使えるプログラミング教材

・全国でのプログラミング教育シンポジウム開催

プログラミング教育についてのシンポジウムを全国キャラバンの形式で開催することで、「初めてプログラミング教育に取り組む先生の情報収集」や「試行錯誤している先生の情報交換」の機会を提供します。現在、 札幌・仙台・長野・東京・愛知・石川・大阪・島根・香川・福岡の10か所での開催が予定されています。

…いかがでしょう、現在の「みんなのコード」についてご理解いただけましたでしょうか。一人でも多くの方が「プログラミング」や「(電線ではない)コード」という言葉になじんでいただけるように努めていきたいと思います。

*1:実際、昨年度はそういった活動が中心ではありました。

*2:使命・任務、実現したいこと、社会に対してこうしたいという目的

離任式がありました

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 先週の金曜日、久しぶりに狛江五小に行きました。子どもたちの顔を見るのは1か月ぶり。体育館の舞台に立ったときにたくさんの明るい表情と元気な声の挨拶に包まれてうれしかったです。代表の子が作文を読んでくれて、花束を渡してくれました。
 離任式でどんなことを話そうか、ずっと考えてきましたが、やはり、どんな仕事に変わったのかということを子どもたちに分かるように話すことにしました。それはこんな話です。



 皆さん、こんにちは。新しい学年になって、がんばるぞという気持ちで過ごしていることでしょう。私も新しい仕事に変わって、毎日早く慣れようとがんばっています。
 五小には7年間お世話になりました。途中、1年間気仙沼というところに行っていたので、その分を引くと6年間になります。6年間で五小を卒業したようなものだと思ってください。でも、四中に行くわけではありません。
 私の新しい仕事は、日本全国の小学校でプログラミングということを取り入れた学習をするお手伝いです。プログラミングって何でしょう?一言で言うと、コンピュータを思い通りに動かすために、人間の考えを伝えることです。じゃあ、どうやって伝えるか。いろいろなやり方があります。5・6年生の中にはやったことがある人もいますが、iPadの画面でブロックを組み合わせてキャラクターを動かすこともあります。暗号みたいな文字をたくさん書いて伝えることもあります。そうやってプログラムというものを作ることをプログラミングといいます。
 そういえばPepper君も来ましたよね。Pepper君にもいろいろなやり方でやってほしいことを伝えることができます。話しかけて答えてくれることもあります。でも、本当に思ったとおりに動いてもらうにはプログラムを作らなくてはなりません。そのやり方はこれからぜひ勉強していってください。
 プログラミングって、最初はうまくいかないことが多いです。でも、いろいろなやり方を試すとうまくいくようになります。そうすると、「あれ、なんで?」と考えたくなります。それを繰り返していくと、だんだん考える力が伸びてきます。
 さて、皆さんもこれから、プログラミングに限らず、いろいろなことにチャレンジしてください。そして、うまくいかなくてもすぐにあきらめないで、もう一度やってみたり、やり方を変えてみたりしてうまくいくようにがんばってみてください。私も新しい仕事でたくさんのことにチャレンジしていきます。

 2〜6年生の子どもたちにどれだけ伝わったかはわかりません。しかし何はともあれ、新しい学年でどんどん新しいことにチャレンジして自分の世界を広げていってくれるといいなあと思います。
 体育館を出たところで、以前卒業させた子のお母さんが待っていて、花束をくださいました。とてもありがたく、感謝の気持ちでいっぱいになりました。お世話になったことをお返しするためにも、新しい世界でがんばっていこうと思いました。