「明日」をつくるしごととくらし

テクノロジーを取り入れた教育の普及に取り組む NPO で働いています。

Jamboard の背景を活用しよう

 オンラインホワイトボードの Jamboard は授業や研修のグループ活動にとても便利です。学校だったらこれまで模造紙*1を広げて付箋紙を貼る活動をしていた場面のほとんどで使えるのではないかと思います。
 無地のフレーム(ページ)もいいのですが、背景を変えることによって紙では難しかったことが簡単にできるようになります。例えば、こちらの記事にあるようなシンキングツールを背景に読み込めば、グループで考えを整理してまとめるのに使えます。互いの思考を視覚化し、共通点や相違点を確認してさらに話し合いを深めることができるでしょう。 gsuite.paidagogos.me  また、国土地理院の電子地図で白地図を表示し、スクリーンショットを撮るなどして保存したものを背景として使うと、これまで感熱紙の拡大コピーで多大な手間とコストを掛けなければできなかった学習活動を手軽に進めることができます。 maps.gsi.go.jp  やり方が分かれば、先生方のこれまでの経験から幅広い活用アイデアが出てくるのではないでしょうか。何か実践されましたら共有していただけるとありがたいですし、「Jamboard 背景画像共有ライブラリ」のようなものがあると、授業準備の効率化にもつながると思います。
 Jamboard に背景を読み込む方法は例えばこちらの記事に書かれていることを参考にするとよいでしょう。また、当然ですが使用する画像の著作権などには十分注意しましょう。 note.com

*1:机4つ分ぐらいの大きさの紙。地方によって、大判紙、広用紙などいろいろな呼び方がある

オンラインプレゼンするなら mmhmm

 研修をオンラインで実施することが増えています。今後もまだまだ続くでしょう。オンラインでのプレゼンを少しでも効果的に行えるよう、いろいろなツールを試しています。
 今回紹介する「mmhmm」*1はスライドに自分の姿を映し込んだり、多様な効果を付けたりすることができるツールです。Mac版は正式リリースとなりましたが、Windows 版まだベータ版です。mmhmm はバーチャルカメラとして動作します。Zoom などで「画面の共有」をしなくてもカメラを mmhmm に切り替えて、スライドを表示しながら話している自分の表情なども同時に見せられるのです。静止画では分かりにくいのですが、下の例では右上の円の中にいる私は、写真をはめ込んだのではなく、カメラの映像をリアルタイムで表示しています。

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使用例

 同様のことは、OBS など他のツールを使っても実現できるのですが、簡単に多様な効果を付けられて使い勝手も一段上だと感じました。

 インストール方法や使い方は、すでに分かりやすく解説されている記事がありますので、ご覧ください。書いてくださった方、ありがとうございます! www.yukibnb.com www.yukibnb.com

*1:ンーフーと読むようです。

共通テストに教科「情報」追加案

news.yahoo.co.jp  来年2022年度から高校で「情報Ⅰ」が必履修となります。しかし、大学入試に入れるかどうかについて、「生徒の学習環境がまだ整っていない」ということで反対意見も出ているそうです。「情報Ⅰ」の内容が教えられる先生の数が足りないという現状については、確かにそうなのだろうという話をいくつか聞いています。学校規模や持ち時数などさまざまな要因が絡んでいてそれぞれの学校で簡単に解決できることではないとは思います。
 しかし、そのままでいいということではないはずです。これから何年も「まだ整わない」と言い続けるつもりなのでしょうか。「できるところからやる」ということはできないものでしょうか。「全部きっちりそろえてから実施する」と平等の確保を大切にする立場が必要である側面もあるのかもしれませんが、そのために前に進めないのは避けるべきだと考えます。
 情報活用能力の高い学生を取ろうという意欲のある一部の大学が採用して、良い結果につながりさらに広がっていく、そんな可能性を勝手に考えています。

そこにリスペクトはあるか?

 リスペクト・トレーニングというものがあることを知りました。ハラスメントを防止するための研修です。 forbesjapan.com  キャストやスタッフ全員がこの研修を受けた撮影現場では、「今のちょっとリスペクト入ってないんじゃないですか?」と言えるようになって、言われた側も自分の状態を深呼吸して見つめ直すようになり、雰囲気が全体に良くなったのだそうです。こういった取り組みが、どの職場にも広がっていくといいと思います。もちろん、学校という職場でも。
 「リスペクト」というと「尊敬」と捉えられるかもしれませんが、「相手の価値を認める」といった意味で受け止めるといいのではないかと思います。その辺りの感覚がこちらのコラムでうまく説明されています。 kiwi-english.net  職場だけでなく、ネット上で発信する際にも心がけたいことだと思います。伝えたいという思いが勝って、強い表現や刺激的な言葉を使っている投稿を目にすることがあります。その対象となる人を軽んじているように感じてしまい、投稿の主張がいいことであっても、共感できなくなってしまうのです。
 自分にも常に問いかけていきたいと思います。「そこにリスペクトはあるか?」

教科とプログラミング - 正多角形を例に

 コンピュータを「自分がやりたいこと・作りたいことを実現する手段」として活用するならば、学校で学ぶ教科の中に押し込めておくのは、とてももったいないことだと思います。しかし、学校で子どもたちと毎日向き合う先生方にとって、これまでに指導してきた学習活動からと離れることは、大きな不安と抵抗感を伴うことでしょう。私が今でも現場にいたら、「大切さは分かるんだけど、でもね。」と言っていたかもしれないと思います。
 子どもたちに一番近いところにいる先生方に抵抗感をもたれては、進めようがない…そこで、プログラミングを導入するにあたって、「各教科等の特質に応じて」「プログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付ける」という学習指導要領の記述に落ち着いたと、私は理解しています。もしかしたら、「プログラミング」という言葉が入らなかった可能性だってあるのではないでしょうか。見方によっては現状の記述は不十分かもしれませんが、今の時点で学習指導要領に「プログラミング」という語が入ったことは、画期的なことです。
 さて、従来の教科指導と新しく入ったプログラミングの関係をどのように捉えたらいいのでしょうか。そのことを、学習指導要領に例示されている5年算数・正多角形をかく学習活動を通して考えてみましょう。
 授業は、これまでに学習したことの確認から始まります。使える道具をそろえるのです。

  • 正多角形は全ての角の大きさが等しい
  • 正多角形は全ての辺の長さが等しい
  • 多角形の全ての角の和は、いくつの三角形に分割できるかで求められる

 このことを元にして、どうすればコンピュータに正多角形をかかせることができるかを考え、プログラミングしていきます。詳しい過程は、例えばこちらを参照してください。 procurri.jp  この活動を通して、算数教育としての学びと、プログラミング教育としての学びを子どもたちにつかませていきたいところです。それぞれどう評価するかという観点を設定する必要があります。算数の観点としては、「きまりを見つけて、それを活用することのよさ」に気付くということになるでしょう。プログラミングの観点としては、「的確な指示さえすれば、正確に繰り返せるコンピュータのよさ」に気付くということです。
 そして、その後に「もっといろいろなきまりを見つけてみたい」となれば、算数科としての「学びに向かう力」が育ったと見て取れますし、「もっと他の複雑な図形をかいてみたい」となれば、プログラミング教育のねらいが達成されているということになります。ワークシートなどに「気付いたこと・考えたこと・これからやってみたいこと」を書かせて見取ることになるでしょう。
 まずは日本全国のどの学校でも、せめて正多角形をコンピュータでかく活動を通して、上記の力を身に付けさせてほしいと思います。しかしそれは、きっかけに過ぎません。子どもたちにとって、日々の学習活動の中で役に立つことはとても大きな意味をもちます。先生方にとってもそれは同じでしょう。しかし、公教育のゴールは、学んだことを「学校という限定的な場面で生かすこと」ではなく、「人生における複雑な課題解決に少しでも生かせること」ではないでしょうか。だとすれば、教科の学びをより確実にするというレベルに留まることなく、子どもたちが現実世界と向き合う中で抱いた問題意識を解決するための手段としてプログラミングを取り入れる必要があるのではないでしょうか。子どもたちの未来の幸せを視野に入れた学習活動をデザインしていただきたいと願ってやみません。

プログラミングは教科をつなぐ接着剤

 タイトルは、プログラミング教育指導教員養成塾に参加してくださった先生が3年ぐらい前におっしゃった言葉です。とても印象に残って、研修などでもときどき使わせていただいています。

 プログラミングを教科に関連付ける際に、1つの教科の枠に閉じ込めてしまうのでなく、教科等横断的な課題解決に活用していくと、プログラミング教育のねらいをよりよく達成できるように思います。そのことがひいては、新学習指導要領が求めている学習の基盤となる資質・能力の育成につながるのです。

 教科を学ぶことによって、その教科固有の見方・考え方を身に付けることができますが、それはゴールではありません。各教科で身に付けた力を自在に使って目の前の問題を効果的に解決していけるようになることがゴールなのです。従って、現実の問題に近い形で、学んだことを適用する場面に子どもたちを向かわせる必要があります。今までに身に付けたもののうち何が使えるかを考え、適用し、うまくいかなければ修正して再度適用してみるというプロセスを回していくのです。であれば、教科等横断的になることは必然と言っていいかもしれません。そういった授業を構想していく際にプログラミングが媒介になることが想定され、「接着剤」という表現につながるわけです。

 誤解されていることが多いのですが、プログラミングが初等教育から導入されたのは教科の理解をより確かにすることが第一なのではありません。(と言うと、抵抗を感じる先生が多いようですが。)そもそものねらいは文部科学省のいろいろな文書からも読み取ることができます。例えば、小学校学習指導要領解説 総則編の第3章第3節の1の(3)には、プログラミングに取り組むねらいとして次のように書かれています。

論理的思考力を育むとともに,プログラムの働きやよさ,情報社会がコンピュータをはじめとする情報技術によって支えられていることなどに気付き,身近な問題の解決に主体的に取り組む態度やコンピュータ等を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとする態度などを育むこと,さらに,教科等で学ぶ知識及び技能等をより確実に身に付けさせることにある。

 子どもたちが、現代の社会が情報技術に支えられていることに気付くこともなく、コンピュータをよりよい社会の実現に活用しようという態度を育むこともないのに、「プログラミング教育」と位置付けることはできないのです。

ゲームやネットから離れられない子どもとどう向き合うか

 子どもが長い時間ゲームやネットにどっぷりでいると、親としては心配になることでしょう。しかし、ゲームやネット=諸悪の根元と捉えて遠ざけても、子どもが抱える問題を解決することにはなりません。
 どう考え、どう対応すればいいのか。児童精神科医の先生がアドバイスしている記事です。 resemom.jp

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